iDeCoで定期預金を選ぶ方法|節税効果と手数料比較【2026年7月】

目次
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」とは?
「個人型確定拠出年金」と漢字が並ぶと、目にしただけで難しそうに感じますね。この制度は2017年1月から対象者が大きく広がり、その後も改正を重ねながら、老後資金づくりの代表的な制度として定着しています。まずは名前を「個人型」「確定拠出」「年金」の3つに分解してみましょう。
- 個人型…自分(個人)で取り組むもの(対義語の「企業型」は企業が従業員のために行うもの)。
- 確定拠出…「決まった金額」を「毎月」積み立てる(拠出する)こと。
- 年金…原則60歳以降に受け取る、老後のためのお金。
つまりiDeCoは、「自分の老後の生活費のために、毎月決まった金額を積み立てる」というシンプルな制度です。掛金は月々5,000円以上1,000円単位で、加入区分ごとの上限の範囲内で設定できます(iDeCo公式)。
ただ積み立てるだけ? 注目される理由は「税制優遇」
老後のために若いうちから積み立てる――それ自体は当たり前のことです。では、なぜiDeCoはこれほど注目されているのでしょうか。理由は税金面で非常に優遇されているからです。iDeCoには大きく3つの税制メリットがあります。
- 掛金が全額所得控除(拠出時)…積み立てた金額が所得から差し引かれ、所得税・住民税が軽くなります。
- 運用益が非課税…通常、預金の利息や運用益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCo内の運用益は非課税です。
- 受取時にも控除がある…一時金なら退職所得控除、年金形式なら公的年金等控除の対象になります。
とくに大きいのが①の所得控除です。日本の所得税・住民税は「累進課税」(所得が増えるほど税率が上がる仕組み)のため、所得から掛金分が差し引かれる効果は、所得が高い人ほど大きくなります。
ここで重要な前提が1つあります。iDeCo公式も明記しているとおり、課税所得がない方は、掛金の所得控除を受けられません(所得控除は本人の所得からのみ差し引かれ、配偶者の所得からは控除されません)。専業主婦(夫)など課税所得がない場合、iDeCoのメリットは「運用益非課税」と「受取時の控除」に限られる点は押さえておきましょう。
節税効果の目安(年間)
| 課税所得 | 自営業(月6.8万円まで) | 会社員・公務員(企業年金がない場合・月2.3万円まで) |
|---|---|---|
| ~195万円 | 約12.3万円 | 約4.1万円 |
| 195万円~330万円 | 約16.5万円 | 約5.5万円 |
| 330万円~695万円 | 約24.8万円 | 約8.3万円 |
| 695万円~900万円 | 約27.3万円 | 約9.2万円 |
| 900万円~1800万円 | 約35.6万円 | 約12.0万円 |
| 1800万円~4000万円 | 約41.4万円 | 約14.0万円 |
| 4000万円~ | 約45.6万円 | 約15.4万円 |
※上記はあくまで目安です。実際には扶養家族の数や納めている税額により差が出ます。掛金の上限まで拠出した前提の概算です。
ここで勘違いしないでいただきたいのは、これは「毎年」得られる節税効果だという点です。たとえば40歳から始めて65歳まで続けられれば、上記の金額の約25年分が積み上がるイメージになります。若いうちから始めるほど、生涯にわたる節税効果を大きくできます。
加入できる年齢・掛金の上限(2026年7月時点)
iDeCoは税制優遇が大きいぶん、職業や年金の加入状況によって毎月の掛金に上限が設けられています。2026年7月時点のおもな区分は次のとおりです。
- 自営業など(第1号被保険者):月6.8万円(国民年金基金等と合算)
- 会社員で企業年金がない人(第2号):月2.3万円
- 会社員で企業型DC・確定給付年金(DB)などがある人・公務員:月2.0万円(2024年12月の改正で従来の1.2万円から引き上げ)
- 専業主婦(夫)など(第3号):月2.3万円
加入できる年齢は原則65歳未満(国民年金の被保険者で、老齢基礎年金などを受給していない人)です。かつての「60歳まで」から拡大されています。
2026年12月の制度改正で、さらに拡大予定
年金制度改正により、2026年12月1日施行(2027年1月の引き落とし分から適用)で、iDeCoはさらに使いやすくなる予定です。おもな変更点は次のとおりです(施行までに内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください)。
- 加入可能年齢の上限が70歳未満に引き上げ(老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受給していない等の要件あり)。
- 拠出限度額の引き上げ:自営業(第1号)が月6.8万円→月7.5万円(国民年金基金等と合算)、会社員・公務員(第2号)は企業年金と合算して月6.2万円まで拠出できるように。
iDeCoは「定期預金」だけで運用することもできる
iDeCoは銀行や証券会社(運営管理機関)で申し込めます。運営管理機関は約160社あり、それぞれ取り扱う商品や手数料が異なります。投資信託など値動きのある(元本割れの可能性がある)商品も選べますが、運用先に「定期預金」などの元本確保型を指定することも可能です。窓口でリスク商品をすすめられても、元本を減らしたくない人は「元本確保型(定期預金)で運用したい」と伝えれば、節税しながら元本を確保する積み立てができます。
ただし注意点として、iDeCoで選べる定期預金(元本確保型)の金利は、その運営管理機関が用意した商品ごとに決まっており、一般の銀行の店頭・ネット定期預金と同じ金利とは限りません。金利上昇で改善した商品もありますが、iDeCo公式も「元本確保商品は利息額を手数料が上回る場合があります」と明記しています。つまり、定期預金を選ぶiDeCoのメリットは「運用でお金を大きく増やすこと」ではなく、老後資金を着実にためながら、毎年の所得税・住民税を軽くすることにあります。
定期預金だけで運用するなら「手数料」を必ず確認する
元本確保型(定期預金)だけで積み立てる場合、受け取れる利息が小さいぶん、手数料の負担割合が相対的に大きくなります。iDeCoの手数料は次の3者に支払います(金額はiDeCo公式・国民年金基金連合会の公表値/2026年7月13日確認)。
| 支払先 | 金額(税込) | ポイント |
|---|---|---|
| 国民年金基金連合会(加入時) | 2,829円(初回のみ) | どの金融機関を選んでも共通。2027年1月以降も据え置き。 |
| 国民年金基金連合会(加入中) | 掛金納付の都度105円 →2027年1月26日の引落分から月額120円 |
物価・人件費上昇を理由に見直し(iDeCo公式の告知)。どの金融機関でも共通。 |
| 事務委託先金融機関(信託銀行) | 月66円程度が一般的 | 資産の管理費用。運営管理機関によって異なるため要確認。 |
| 運営管理機関(申込先の銀行・証券会社) | 0円〜数百円/月 | ここだけは金融機関の選択で差がつく。0円のところも多い。 |
運営管理機関手数料が0円のところを選んだ場合、加入中にかかる手数料は月171円(105円+66円)=年間約2,052円が目安です(2027年1月の引落分以降は月186円=年間約2,232円)。これに対し、たとえば課税所得330万円~695万円の会社員が月2.3万円を拠出すると、節税効果は年約8.3万円。手数料より所得控除による節税額のほうがはるかに大きいため、課税所得がある人は「定期預金だけの運用」でもトータルではプラスになりやすい計算です。
一方で、課税所得がない人(所得控除を使えない人)が元本確保型だけで運用すると、手数料が利息を上回り、実質的に資産が目減りする可能性があります。この場合はiDeCoにこだわらず、通常の定期預金やNISAなど、ほかの選択肢と比べたうえで判断しましょう。
どの運営管理機関(金融機関)で申し込む?――定期預金中心なら「手数料」で選ぶ
iDeCoは銀行・証券会社・保険会社など多数の運営管理機関から申し込めます。前述のとおり、加入時2,829円・国民年金基金連合会105円・事務委託先66円は、どこで申し込んでも同じです。差がつくのは運営管理機関手数料だけ——つまり、元本確保型(定期預金)中心で運用するなら、実質的に「手数料の安さ」で選べばよいということになります。
運用期間中に毎月かかる費用の実例は次のとおりです(確定拠出年金教育協会「iDeCoナビ」・2026年7月1日現在。積立を行う場合の毎月の合計額)。
| 区分 | 毎月かかる費用(積立中) | 該当する金融機関の例 |
|---|---|---|
| 運営管理機関手数料が0円 | 171円(105円+66円) | イオン銀行/りそな銀行/三菱UFJ銀行(スリムコース)/ゆうちょ銀行(スマート積立プラン)/三井住友銀行(みらいプロジェクト)/SBI証券(セレクトプラン)/楽天証券/マネックス証券/松井証券/大和証券/野村證券 など |
| 条件つきで0円 | 171円(条件を満たす場合) | みずほ銀行(資産50万円以上)/ソニー銀行(資産50万円以上) |
| 運営管理機関手数料がかかる | 430円〜590円程度 | 三井住友銀行(標準コース)431円、地方銀行や保険会社では月450〜590円程度の例もある |
毎月171円と毎月500円では、年間で約4,000円、20年で約8万円の差になります。運用益がほとんど期待できない定期預金中心の運用では、この差はそのまま結果に響きます。まずは「運営管理機関手数料0円」の金融機関から選ぶのが基本と考えてよいでしょう。
このほか、他の制度へ資産を移すとき(移換時)に4,400円程度、受け取り時に振込の都度440円程度がかかるのが一般的です。金融機関はあとから変更もできますが、手間と費用がかかるため、最初の選択は慎重に行いましょう。
※手数料は改定されることがあります。上記は2026年7月1日時点の一覧にもとづく整理です。申し込む前に、必ず各金融機関の公式サイトとiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)で最新の手数料・商品ラインナップをご確認ください。
なお、定期預金中心で積み立てるなら、「運営管理機関手数料が0円」であることに加えて、「元本確保型(定期預金)のラインナップと金利」もあわせて確認しておくと安心です。iDeCoの定期預金は運営管理機関が用意した専用商品で、預入期間・金利は商品ごとに決まっています。
よくある質問(FAQ)
iDeCoのお金はいつでも引き出せますか?
原則として60歳になるまで引き出せません。老後資金専用の制度のため、途中で自由に使えない点は理解しておく必要があります。近い将来に使う予定のあるお金は、いつでも解約できる通常の定期預金などで管理しましょう。
受け取るときに税金で損をすることはありますか?
受取時には退職所得控除・公的年金等控除が使えますが、会社の退職金と同時期に一時金で受け取ると控除が重なり、課税が増えることがあります。2026年1月からは、退職金と時期を離す目安が「5年ルール」から「10年ルール」に変わりました。退職金がある人は、受け取り時期を事前に検討しておくと安心です。
iDeCoの定期預金の金利は、銀行の定期預金と同じですか?
同じとは限りません。iDeCoで選べる定期預金は、運営管理機関がラインナップとして用意した専用の商品で、預入期間や金利は商品ごとに決まっています。一般の銀行が新規口座開設者向けに提供するキャンペーン金利のような高い金利は、iDeCoの元本確保型では期待しにくいのが実情です。各運営管理機関の「運用商品一覧」で、商品名・預入期間・金利(時点つき)を必ず確認してください。
運営管理機関の手数料が0円なら、どこを選んでも同じですか?
手数料だけを見れば差は小さくなりますが、元本確保型の商品ラインナップ(どの銀行の定期預金を扱っているか・預入期間・金利)や、コールセンター・サイトの使いやすさは金融機関ごとに異なります。定期預金中心で運用するなら、「運営管理機関手数料が0円」かつ「元本確保型の金利が有利」という2点で比較するとよいでしょう。
掛金の積み立てを途中でやめることはできますか?
資産を引き出すことはできませんが、掛金の拠出を停止して「運用指図者」となり、それまでの資産の運用だけを続けることは可能です。また、掛金の額は年1回変更でき、最低額は月5,000円です。収入や家計の状況が変わったときは、いったん減額して続けるという選択肢もあります。なお、拠出を止めている間も口座管理手数料はかかります。
あとから金融機関(運営管理機関)を変更できますか?
変更できます。ただし手続きに時間がかかるうえ、移換時に4,400円程度の手数料がかかるのが一般的で、移換中は運用が止まる期間も生じます。最初の金融機関選びは慎重に行いましょう。
受け取り方にはどんな選択肢がありますか?
60歳から75歳の間で受け取りを開始でき(通算加入期間が10年以上の場合)、方法は①一時金として一括で受け取る(退職所得控除の対象)②5年以上20年以下の年金として分割で受け取る(公的年金等控除の対象)③一時金と年金の組み合わせの3つから選べます。どれが有利かは退職金の有無や税状況によって異なるため、受取時期が近づいたら早めに検討しましょう。
iDeCoの定期預金も預金保険(ペイオフ)の対象ですか?
iDeCoで購入した定期預金も、その銀行に預けたほかの預金と合算して、預金保険制度の保護(1金融機関につき元本1,000万円までとその利息等)の対象になります。同じ銀行に多額の預金がある方は、合算されて上限を超えないかを確認しておきましょう。
定期預金と投資信託、どちらを選べばよいですか?
元本割れを避けたい人は定期預金(元本確保型)、長期でお金を増やすことを重視する人は投資信託、というのが基本的な考え方です。iDeCoは途中で配分を変更することもできるため、自分のリスク許容度に合わせて選びましょう。iDeCoの外で余裕資金を運用するなら、SBI新生銀行などネット系の銀行の円定期預金(元本保証・預金保険の対象)と組み合わせて、目的別に預け先を分ける方法もあります。
















