投資信託・外貨とのセット定期|「年3%」の実質利回りを自分で計算する

セット定期の実質利回りを電卓で計算するイメージ

銀行の窓口やサイトで「投資信託と同時申込で円定期預金が年3%」「外貨定期とセットで円定期の金利アップ」という案内を見かけることが増えました。年3%、年5%、なかには年7%という数字も並びますが、その金利が付くのは預けたお金の一部に、しかも3か月だけというのがセット型の定期預金(以下、セット定期)の共通の型です。この記事では、セット定期の「年◯%」を、自分の資金全体に対する実質利回りに直す計算の手順を示し、2026年9月時点の実例に当てはめて確かめます。個別の商品を勧めるものではなく、どのセット定期にも同じ手順で当てはめられる「物差し」を渡すことが目的です。

なお、退職金専用のセットプランについては退職金の定期預金は損?専用プラン・セット商品の金利と落とし穴で個別に取り上げています。本記事は退職金に限らない一般向けのセット定期を対象にします。

目次

「年3%」は、預けた資金の何割に、何日間つく金利なのか

セット定期の広告に出てくる金利には、必ず2つの前提が付いています。1つは対象が円定期預金の部分だけであること。投資信託や外貨預金として申し込んだ部分には、その金利は付きません。もう1つは適用が初回の預入期間(多くは3か月)だけであること。満期後は自動継続されても、その時点の通常金利に戻ります。

さらに、円定期に預けられる金額には「投資信託の購入額まで」「外貨定期と同額まで」「総額の50%以下」といった上限が設けられているのが通例です。つまり「年3%の定期預金」に見えて、実態は「資金の半分に、3か月だけ、年3%」であり、残り半分は手数料や為替コストのかかる別の商品に入っています。年3%という数字だけを見て「定期預金で3%も付くなら」と判断すると、資金全体で見た利回りを大きく読み違えます。

金利表示そのものの読み方(年率表示と受取利息の関係)は定期預金キャンペーンの見極め方|年0.5%表示と受取利息のカラクリで整理していますが、セット定期ではそこに「対象は一部だけ」「相手側の商品にコストがある」という2段が加わります。

実質利回りを出す4つの手順

セット定期の価値は、次の順に計算すると資金全体に対する数字に直せます。電卓があれば十分です。

  1. 期間に直す:円定期の利息(税引前)=円定期の預入額 × 年率 × 預入日数 ÷ 365。3か月ものなら日数はおおむね90日前後です。
  2. 税引後にする:利息には20.315%の税金がかかるので、税引前利息 × 0.79685 が手取りです(内訳は預金利息の税金20.315%の内訳)。
  3. 「上乗せ分」だけを取り出す:同じ銀行の通常の3か月定期でも利息は付きます。セットで申し込んだことで増えた手取りは「優遇金利の税引後利息 − 通常金利の税引後利息」です。セット定期の価値はこの差額であって、優遇金利の利息全額ではありません。
  4. 相手側のコストを引く:投資信託なら購入時手数料(申込額 × 手数料率)、外貨預金なら為替コストの往復分(外貨額 × 片道コスト × 2)を差し引きます。残った金額を資金全体(円定期+相手側商品)で割った値が実質利回りです。

手順4で引くのは「確定しているコスト」だけです。投資信託の値動きや為替レートの変動による損益は、預けた時点では分からないので計算に入れません。「確定コストを引いた時点でプラスが残るか」が最初の関門で、ここでマイナスなら、そのセットは相場が有利に動いてはじめて元が取れる商品だと分かります。

投資信託セットに当てはめる——みずほマネープランセット(2026年9月時点)

みずほ銀行の「みずほマネープランセット」は、投資信託と同日に申し込んだ円定期預金(3か月もの)に初回適用金利を上乗せするプランです。公式サイト(2026年9月1日現在)によると、みずほ銀行で投資信託を初めて買う人向けの「新規プラン」では、投資信託の購入金額が240万円以上なら年3%、500万円以上なら年7%(税引後5.577%)、すでに投資信託を保有している人向けの「基本プラン」では500万円以上で年2%となっています。1,000万円以上の購入で+2%、みずほ銀行のNISA口座の利用で+1%の特典があり、最大は年10%です。円定期に預けられる額は、公式サイトのQ&Aによれば投資信託を500万円購入した場合で最大500万円、つまり投資信託の購入額までです。初回適用金利は当初3か月のみで、満期後はみずほ銀行所定の金利で継続されます。同サイトに掲載の2026年8月17日現在の通常のスーパー定期(3か月もの・300万円未満)の金利は年0.500%です。

この条件に、手順1〜4を当てはめます。投資信託500万円、円定期500万円、合計1,000万円を新規プラン(年7%)で申し込んだ場合です。

  • 円定期の利息(90日):500万円 × 7% × 90 ÷ 365 = 86,301円(税引前)→ 税引後 約68,769円
  • 通常金利(年0.500%)なら:6,164円(税引前)→ 税引後 約4,912円
  • セットで増えた手取り(上乗せ分):約63,857円
  • 投資信託500万円の購入時手数料:手数料率1.10%なら55,000円、2.20%なら110,000円、みずほ銀行が案内する上限3.575%(税込)なら178,750円

上乗せ分63,857円を投資信託の購入額500万円で割ると約1.28%です。これが分岐点で、購入時手数料率が1.28%を超える投資信託を組み合わせた時点で、3か月分の優遇利息はすべて手数料に消えます。手数料率が1.10%なら差し引き約8,900円のプラス、2.20%なら約46,000円のマイナスから運用が始まる計算です。資金全体1,000万円に対して見ると、優遇利息の手取り68,769円は3か月で0.69%、上乗せ分だけなら0.64%にあたり、「年7%」という表示から受ける印象とはかなり離れます。

みずほ銀行自身も注意事項で「投資元本を割り込むことによる損失や手数料などのコスト等が、円定期預金の初回適用金利の利息額を上回る場合があります」と明記しています。セット定期の判断は、円定期の金利ではなく、組み合わせる投資信託の購入時手数料と信託報酬(保有中に毎年かかる費用)で決まる、というのがこの計算の結論です。

外貨セットに当てはめる——ソニー銀行のセット定期プログラム(2026年9月7日時点)

外貨預金と組み合わせるタイプでは、投資信託の手数料に代わって為替コストが相手側のコストになります。ソニー銀行の「セット定期プログラム」は、円普通預金から円定期と外貨定期を同時に申し込むと円定期の金利が上がる仕組みで、円定期と外貨定期の比率を「セット25」「セット50」「セット75」から選びます。公式サイト(2026年9月7日現在)の例では、申込額100万円・米ドル・3か月の場合、円定期の適用金利はセット25で年0.56%、セット50で年0.70%、セット75で年1.10%。同日のソニー銀行の通常の円定期3か月ものは年0.500%なので、上乗せ幅は0.06〜0.60ポイントです。通貨によって上乗せ幅は異なり、セット50・3か月では豪ドルとNZドルが年1.50%、南アフリカランドが年5.00%と案内されています。円定期と外貨定期のどちらかを解約すると、上乗せ金利の特典は預入日にさかのぼって消滅します。

同日のソニー銀行の為替コストは、米ドルが1米ドルあたり片道0.15円(基準レート156.09円)、南アフリカランドが1ランドあたり片道0.20円(基準レート9.77円)です。これで手順1〜4を回します。

  • セット50・米ドル・100万円:円定期50万円の上乗せ分は税引後で約196円(年0.70%と年0.500%の3か月分の差)。一方、米ドル定期50万円分(約3,200米ドル)の為替コストは往復で約960円。上乗せ利息の約5倍の為替コストが確定します。
  • セット50・南アフリカランド・100万円:円定期50万円の上乗せ分は税引後で約4,421円と大きくなりますが、ランド定期50万円分(約5万ランド)の為替コストは往復で約20,060円。上乗せ利息の約4.5倍です。
セット50・3か月・申込額100万円の場合、円定期の上乗せ利息は米ドルで約196円、南アフリカランドで約4,421円なのに対し、外貨側の為替コスト往復は米ドルで約960円、南アフリカランドで約20,060円と、いずれも上乗せ利息の4〜5倍になることを示す棒グラフ
ソニー銀行公式の適用金利(円定期3か月:通常年0.500%、セット50は米ドル年0.70%・南アランド年5.00%)と為替コスト(米ドル片道0.15円・基準レート156.09円、南アランド片道0.20円・基準レート9.77円)から当編集部が試算。円定期50万円・外貨定期50万円、預入日数90日、税率20.315%で計算した概算。

どちらの通貨でも、円定期側で増える利息より、外貨側で確定する為替コストのほうがはるかに大きいことが分かります。もちろん外貨定期にはその通貨の金利(例では米ドル3か月で年3.500%)が付きますし、円安に動けば為替差益も出ます。しかしそれは外貨預金そのものの損益であって、「セットにしたから得られた価値」ではありません。外貨セットの円定期優遇は、外貨預金を始める判断を後押しする程度のもので、外貨預金の損益を左右する大きさではない——これが計算から見える実像です。外貨預金の為替手数料の見方は円だけでなく外貨預金で資産分散|為替手数料の比較もあわせてご覧ください。

金利の高い通貨のセットほど、円定期の優遇は「為替コストの前払い」に近づく

上の例で目を引くのは、南アフリカランドのセットだけ円定期が年5.00%と突出している点です。これは銀行が気前よく金利を付けているのではなく、高金利通貨ほど為替コストの率が高い(ランドは基準レート9.77円に対し片道0.20円で約2.0%、米ドルは156.09円に対し0.15円で約0.1%)ことと表裏の関係にあります。円定期側の高い優遇は、外貨側で銀行が受け取る為替コストの一部を戻している形に近く、「円定期の金利が高いセット=有利なセット」ではなく「外貨側のコストが大きいセット」と読むのが実態に合っています

検索上位の解説には「セット定期は外貨側の金利が高いので円定期の低さを補える」とまとめているものがありますが、外貨側の金利は為替レートが動けば簡単に打ち消されます。確定しているのは為替コストのほうです。確定している損(為替コスト)と、確定している得(円定期の上乗せ)を先に比べるのが、この記事で勧める順番です。

申込条件の型——りそな銀行の新規コースにみる「比率」「総額」「1回限り」

セット定期は各行とも条件の骨組みが似ています。りそな銀行の「りそなの資金運用プラン(新規コース)」を例にすると、公式サイト(2026年9月7日確認)では、投資信託・りそなファンドラップ(50%以上)と円定期預金(50%以下)を同時に、総額500万円以上1,000万円未満で申し込むと円定期3か月ものが年3.0%(税引後2.390%)、総額1,000万円以上なら年5.0%(税引後3.984%)と案内されています。対象はりそなで投資信託・ファンドラップを過去1年以内に保有していない人で、1人1回限り、店頭のみの受付です。特別金利は当初3か月のみで、その後は満期時点の店頭金利に戻ります。

ここにセット定期に共通する4つの条件が揃っています。①円定期は投資商品と同額または一定比率まで、②合計の申込総額に下限がある、③初回3か月だけの優遇、④対象者や回数の制限(新規・1回限り・店頭限定)。どの銀行のセット定期を見るときも、まずこの4項目を要項から拾えば、実質利回りの計算に必要な材料はそろいます。りそな銀行はさらに、投資信託を購入後1か月以内に解約した場合は定期預金の金利を店頭金利に修正する旨も明記しており、「投資信託をすぐ売って優遇金利だけ取る」使い方を想定していません。

確認項目みずほマネープランセット(投信)ソニー銀行 セット定期(外貨)りそな 新規コース(投信)
円定期の優遇金利(3か月)投信500万円以上で年7%(新規プラン)、最大年10%米ドル セット50で年0.70%、南アランド セット50で年5.00%総額500万円以上で年3.0%、1,000万円以上で年5.0%
円定期に預けられる上限投資信託の購入額までセット25/50/75の比率どおり総額の50%以下
相手側の確定コスト購入時手数料(最大3.575%〈税込〉)+信託報酬為替コスト往復(米ドル0.30円、南アランド0.40円/1通貨)購入時手数料+信託報酬
優遇が消える条件初回満期前の解約(期日前解約利率を適用)円定期・外貨定期のどちらかを解約すると預入日にさかのぼって消滅投信を1か月以内に解約すると店頭金利に修正
時点2026年9月1日現在(公式)2026年9月7日現在(公式)2026年9月7日確認(公式)

※上記は各行公式サイトで確認した時点の内容です。金利・条件は随時見直されるため、申込前に必ず各行の最新の要項でご確認ください。

預金保険で守られるのは円定期の側だけ

セット定期を「定期預金」と呼ぶときに見落とされがちなのが、保護の範囲です。預金保険機構の「保護の範囲」によれば、定期預金を含む一般預金等は1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息が保護されますが、外貨預金は預金保険の対象外です。投資信託はそもそも預金ではなく、みずほ銀行の注意事項にもあるとおり預金保険機構の保護の対象ではありません。つまり、セット定期で守られているのは円定期の側だけで、資金の半分は預金保険の外にあると考えるのが正確です。円定期の元本保証と、セット全体の安全性は別の話として切り分けておく必要があります。

判断材料:セット定期を検討する人が自分に問う3つのこと

計算の手順と実例を踏まえると、セット定期を使うかどうかは次の3つで決まります。

  1. 相手側の商品を、セットがなくても買うつもりだったか。投資信託や外貨預金を「そもそも持ちたい」と考えていた人にとって、円定期の優遇は純粋な上乗せです。逆に、優遇金利のためだけに投資信託や外貨を買うなら、上で見たとおり確定コストが上乗せ利息を上回るのが普通で、相場が有利に動かないかぎり元が取れません。
  2. 手順4の「確定コストを引いた残り」がプラスか。投資信託セットなら「上乗せ利息(税引後)÷ 投信購入額」が購入時手数料率を上回るか。外貨セットなら上乗せ利息が為替コストの往復分を上回るか。この1行の計算で、セットの価値の大半は判定できます。
  3. セットなしの定期預金と、税引後の手取りで比べたか。たとえばSBI新生銀行の新規口座開設者向け「スタートアップ円定期預金」は、2026年9月7日現在で3か月もの・1年ものとも年1.70%(税引後1.3546%)と案内されており、投資商品との組み合わせを条件にしていません。円定期部分に年7%が付いても、資金全体の3か月分の手取りは前述の例で0.69%です。「資金全体に対する税引後の手取り」に直せば、セットなしの高金利定期のほうが手元に多く残ることも珍しくないので、必ず同じ物差しで並べてから決めてください。

いずれの場合も、金利や為替コストは日々見直されます。この記事の数値は各行公式サイトで確認した時点のものであり、最新の金利・条件は各行公式サイトでご確認ください。

セット定期の計算でつまずきやすい点

優遇金利は「年率」なのに、なぜ3か月分しか受け取れないのですか?

預金の金利はすべて年率で表示する決まりで、実際の利息は預入日数分だけ日割りで付きます。年7%の3か月ものなら受け取れるのは7%の約4分の1です。満期後に自動継続されると、その時点の通常金利(多くは年0.5%前後)に戻るため、「年7%が1年続く」ことはありません。

NISA口座で投資信託を買えば購入時手数料はかからないので、優遇利息はまるごと得になりますか?

NISA口座で買った投資信託でも、購入時手数料がかかるかどうかはファンドごとに決まります(無料の商品もあれば有料の商品もあります)。手数料無料の投資信託を組み合わせられれば手順4で引く確定コストは信託報酬だけになりますが、保有中の信託報酬と値動きによる元本割れの可能性は残ります。また、みずほマネープランセットのようにNISA利用で金利が上乗せされるプランでも、円定期の優遇は投資信託の購入額までという上限は変わりません。

優遇金利の円定期だけ先に解約して、外貨や投資信託は持ち続けても問題ありませんか?

解約そのものは可能ですが、優遇は失われます。みずほ銀行では初回満期前に解約すると初回適用金利は適用されず期日前解約利率になり、ソニー銀行のセット定期では円定期・外貨定期のどちらかを解約した時点で上乗せ金利の特典が預入日にさかのぼって消滅します。3か月間は動かせない資金であることを前提に金額を決めてください。

外貨セットの外貨定期も、円定期と同じく預金保険で保護されますか?

されません。預金保険機構の区分では外貨預金は「預金保険の対象外の預金等」に含まれ、金融機関が破綻した場合は財産の状況に応じて支払われます。保護されるのはセットのうち円定期の側だけです。

まとめ——年◯%は「一部に・3か月・相手側コスト差引前」の数字

セット定期の「年3%」「年7%」は、円定期部分に、初回の3か月だけ、しかも投資信託の手数料や為替コストを引く前の金利です。「上乗せ利息(税引後)から相手側の確定コストを引き、資金全体で割る」という4手順に通せば、どのセット定期でも同じ物差しで比べられます。実例では、投資信託セットは購入時手数料率が約1.3%を超えると優遇利息が消え、外貨セットは為替コストの往復が上乗せ利息の4〜5倍になりました。相手側の商品を本来持ちたかった人には上乗せとして働き、そうでない人には確定コストの前払いになる——それがセット定期の正体です。金利と安全性で預け先を選ぶなら、セットなしの定期預金と税引後の手取りで並べてから判断してください。


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