iDeCoで定期預金を選ぶ方法|節税効果と手数料比較【2026年9月】

iDeCoで老後資金をこつこつ積み立てるイメージ

目次

個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」とは?

「個人型確定拠出年金」と漢字が並ぶと、目にしただけで難しそうに感じますね。この制度は2017年1月から対象者が大きく広がり、その後も改正を重ねながら、老後資金づくりの代表的な制度として定着しています。まずは名前を「個人型」「確定拠出」「年金」の3つに分解してみましょう。

  • 個人型…自分(個人)で取り組むもの(対義語の「企業型」は企業が従業員のために行うもの)。
  • 確定拠出…「決まった金額」を「毎月」積み立てる(拠出する)こと。
  • 年金…原則60歳以降に受け取る、老後のためのお金。

つまりiDeCoは、「自分の老後の生活費のために、毎月決まった金額を積み立てる」というシンプルな制度です。掛金は月々5,000円以上1,000円単位で、加入区分ごとの上限の範囲内で設定できます(iDeCo公式)。

ただ積み立てるだけ? 注目される理由は「税制優遇」

老後のために若いうちから積み立てる――それ自体は当たり前のことです。では、なぜiDeCoはこれほど注目されているのでしょうか。理由は税金面で非常に優遇されているからです。iDeCoには大きく3つの税制メリットがあります。

  1. 掛金が全額所得控除(拠出時)…積み立てた金額が所得から差し引かれ、所得税・住民税が軽くなります。
  2. 運用益が非課税…通常、預金の利息や運用益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCo内の運用益は非課税です。
  3. 受取時にも控除がある…一時金なら退職所得控除、年金形式なら公的年金等控除の対象になります。

とくに大きいのが①の所得控除です。日本の所得税・住民税は「累進課税」(所得が増えるほど税率が上がる仕組み)のため、所得から掛金分が差し引かれる効果は、所得が高い人ほど大きくなります。

ここで重要な前提が1つあります。iDeCo公式も明記しているとおり、課税所得がない方は、掛金の所得控除を受けられません(所得控除は本人の所得からのみ差し引かれ、配偶者の所得からは控除されません)。専業主婦(夫)など課税所得がない場合、iDeCoのメリットは「運用益非課税」と「受取時の控除」に限られる点は押さえておきましょう。

節税効果の目安(年間)

課税所得自営業(月6.8万円まで)会社員・公務員(企業年金がない場合・月2.3万円まで)
~195万円約12.3万円約4.1万円
195万円~330万円約16.5万円約5.5万円
330万円~695万円約24.8万円約8.3万円
695万円~900万円約27.3万円約9.2万円
900万円~1800万円約35.6万円約12.0万円
1800万円~4000万円約41.4万円約14.0万円
4000万円~約45.6万円約15.4万円

※上記はあくまで目安です。実際には扶養家族の数や納めている税額により差が出ます。掛金の上限まで拠出した前提の概算です。

ここで勘違いしないでいただきたいのは、これは「毎年」得られる節税効果だという点です。たとえば40歳から始めて65歳まで続けられれば、上記の金額の約25年分が積み上がるイメージになります。若いうちから始めるほど、生涯にわたる節税効果を大きくできます。

加入できる年齢・掛金の上限(2026年9月時点)

iDeCoは税制優遇が大きいぶん、職業や年金の加入状況によって毎月の掛金に上限が設けられています。2026年9月時点のおもな区分は次のとおりです。

  • 自営業など(第1号被保険者):月6.8万円(国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料と合算)
  • 会社員で企業年金がない人(第2号):月2.3万円
  • 会社員で企業型DC・確定給付企業年金(DB)などがある人・公務員:月2.0万円(2024年12月の改正で従来の1.2万円から引き上げ。「5.5万円-企業型DCの事業主掛金-DB等の掛金相当額」で計算し、上限が2.0万円)
  • 専業主婦(夫)など(第3号):月2.3万円

加入できる年齢は原則65歳未満(国民年金の被保険者で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない人)です。かつての「60歳まで」から拡大されています。

2026年12月の制度改正で、加入年齢と掛金の上限がさらに広がります

2025年6月に成立した年金制度改正法にもとづき、2026年12月1日施行でiDeCoの加入可能年齢と拠出限度額が引き上げられます。掛金への実際の反映は2027年1月26日の引き落とし分(2026年12月分の掛金)からです(厚生労働省「2025年の制度改正」)。おもな変更点は次のとおりです。

  • 加入できる年齢の上限が70歳未満に…国民年金の被保険者でない人でも、60歳以上70歳未満で「iDeCoの加入者・運用指図者・企業年金からiDeCoへ資産を移す人」のいずれかに当てはまり、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っておらず、マッチング拠出もしていなければ加入・拠出を続けられます(新設される「第5号加入者」)。
    なお経過措置として、施行日から3年を経過する日までは、この要件に当てはまらない60歳以上70歳未満の人も加入できます
  • 自営業など(第1号)の上限が月6.8万円→月7.5万円に…国民年金基金等との共通の枠として引き上げられます。
  • 会社員・公務員(第2号)の上限が企業年金と共通の月6.2万円に一本化…これまでは勤務先の企業年金の有無で2.3万円・2.0万円と分かれていましたが、その差異が解消され、企業型DCやDB等と合計して月6.2万円という考え方に変わります。

注意したいのは、専業主婦(夫)など第3号加入者の拠出限度額は引き上げの対象になっていない点です。厚生労働省の説明で引き上げが示されているのは第1号(7.5万円)と第2号(6.2万円)で、第3号は月2.3万円のままです。「2026年12月から誰でも上限が上がる」と受け取らないようにしてください。

施行までに運用の詳細が示される可能性があるため、最新情報は必ず厚生労働省・iDeCo公式サイトでご確認ください。

iDeCoは「定期預金」だけで運用することもできる

iDeCoは銀行や証券会社(運営管理機関)で申し込めます。運営管理機関によって取り扱う商品や手数料が異なり、加入時に提示される運用商品は3~35商品程度です(iDeCo公式)。投資信託など値動きのある(元本割れの可能性がある)商品も選べますが、運用先に「定期預金」などの元本確保型を指定することも可能です。窓口でリスク商品をすすめられても、元本を減らしたくない人は「元本確保型(定期預金)で運用したい」と伝えれば、節税しながら元本を確保する積み立てができます。

ただし注意点として、iDeCoで選べる定期預金(元本確保型)の金利は、その運営管理機関が用意した商品ごとに決まっており、一般の銀行の店頭・ネット定期預金と同じ金利とは限りませんiDeCo公式も「元本確保商品は利息額を手数料が上回る場合があります」と明記しています

この点は、足元で一般の預金金利が上がっているだけに注意が必要です。たとえば三菱UFJ銀行の円預金金利は2026年9月7日現在で普通預金 年0.4000%、スーパー定期1年 年0.5000%、10年 年1.2500%。ゆうちょ銀行も2026年8月10日に貯金金利の引き上げを実施し、同年9月7日現在で通常貯金 年0.400%、定期貯金は1年 年0.500%・5年 年1.000%・10年 年1.250%となっています(同行の金利一覧にて確認)。ただし、こうした一般の預金金利の動きが、iDeCoの元本確保型にそのまま反映されるわけではありません。iDeCoの定期預金は運営管理機関が用意した専用商品なので、金利は「運用商品一覧」で個別に確認してください。

つまり、定期預金を選ぶiDeCoのメリットは「運用でお金を大きく増やすこと」ではなく、老後資金を着実にためながら、毎年の所得税・住民税を軽くすることにあります。

定期預金だけで運用するなら「手数料」を必ず確認する

元本確保型(定期預金)だけで積み立てる場合、受け取れる利息が小さいぶん、手数料の負担割合が相対的に大きくなります。iDeCoの手数料は次の3者に支払います(金額はiDeCo公式・国民年金基金連合会の公表値)。

支払先金額(税込)ポイント
国民年金基金連合会(加入時) 2,829円(初回のみ) どの金融機関を選んでも共通。2027年1月以降も据え置き。
国民年金基金連合会(加入中) 掛金納付の都度105円
2027年1月26日の引落分(2026年12月分の掛金)から月額120円
物価・人件費の上昇を理由に見直し(2026年4月30日付のiDeCo公式のお知らせ)。どの金融機関でも共通。
事務委託先金融機関(信託銀行) 月66円が一般的(かからないプランもある) 資産の管理費用。運営管理機関によって異なるため要確認。
運営管理機関(申込先の銀行・証券会社) 0円〜数百円/月 ここが金融機関の選択でいちばん差がつく。0円のところも多い。

運営管理機関手数料が0円のところを選んだ場合、加入中にかかる手数料は月171円(105円+66円)=年間約2,052円が一般的な水準です(2027年1月の引落分以降は月186円=年間約2,232円)。これに対し、たとえば課税所得330万円~695万円の会社員が月2.3万円を拠出すると、節税効果は年約8.3万円。手数料より所得控除による節税額のほうがはるかに大きいため、課税所得がある人は「定期預金だけの運用」でもトータルではプラスになりやすい計算です。

一方で、課税所得がない人(所得控除を使えない人)が元本確保型だけで運用すると、手数料が利息を上回り、実質的に資産が目減りする可能性があります。この場合はiDeCoにこだわらず、通常の定期預金やNISA、個人向け国債など、ほかの選択肢と比べたうえで判断しましょう。たとえば財務省が2026年9月2日に公表した個人向け国債の9月募集分は、変動10年が年1.95%、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%(いずれも税引前)で、1万円から購入でき口座管理料もかかりません。ただし発行から1年間は原則として中途換金できないため、すぐ使う可能性のあるお金には向きません(利率は募集月ごとに変わります)。

2027年1月から「年1回まとめて拠出」の手数料メリットがなくなります

iDeCoには、掛金を毎月ではなく年1回などにまとめて納める「月別指定(年単位)拠出」という方法があります。国民年金基金連合会の手数料が「掛金を納付する都度105円」だった現在は、年1回拠出にすれば連合会分が年105円で済むため、手数料を抑える手段として使われてきました。

ところが2027年1月26日の引落分からは、年単位拠出でも「120円×拠出期間の月数」がかかる形に変わります(iDeCo公式のリーフレット、および各運営管理機関の告知)。たとえば12か月分を年1回で納める場合は、120円×12=1,440円をまとめて負担することになり、毎月拠出した場合と負担額は変わりません。年単位拠出を「手数料の節約策」として使っている方は、2027年1月以降は前提が変わる点に注意してください。

なお、企業年金制度に加入している方や公務員の方は、そもそも年単位拠出を選べません(毎月定額拠出のみ)。

どの運営管理機関(金融機関)で申し込む?――定期預金中心なら「手数料」で選ぶ

iDeCoは銀行・証券会社・保険会社など多数の運営管理機関から申し込めます。前述のとおり、加入時2,829円と、国民年金基金連合会の105円(2027年1月以降は月120円)は、どこで申し込んでも同じです。差がつくのは運営管理機関手数料と事務委託先手数料——つまり、元本確保型(定期預金)中心で運用するなら、実質的に「手数料の安さ」で選べばよいということになります。

運用期間中に毎月かかる費用の実例は次のとおりです(確定拠出年金教育協会「iDeCoナビ」手数料で比較・2026年8月18日現在の掲載内容を2026年9月7日に確認。積立を行う場合の毎月の合計額)。

区分毎月かかる費用(積立中)該当する金融機関の例
最も安い水準105円三井住友信託銀行【プランS】(運営管理機関手数料に加えて事務委託先の66円もかからない扱いで掲載されています)
これに次ぐ水準160円あいおいニッセイ同和損害保険(資産100万円以上)
運営管理機関手数料が0円171円(105円+66円)イオン銀行/りそな銀行/三菱UFJ銀行(スリムコース)/ゆうちょ銀行(スマート積立プラン)/三井住友銀行(みらいプロジェクト)/SBI証券(セレクトプラン)/楽天証券/マネックス証券/松井証券/大和証券/野村證券/SMBC日興証券/岡三証券/auアセットマネジメント/日本生命保険・第一生命保険・住友生命保険 など
条件つきで0円171円(条件を満たす場合)みずほ銀行(資産50万円以上)/ソニー銀行(資産50万円以上)
運営管理機関手数料がかかる430円〜589円程度三井住友銀行(標準コース)431円、中央労働金庫431円、地方銀行や保険会社では月450〜589円程度の例もある

毎月105円と毎月589円では、年間で約5,800円、20年で約11万6千円の差になります。運用益がほとんど期待できない定期預金中心の運用では、この差はそのまま結果に響きます。まずは「運営管理機関手数料0円」の金融機関から選ぶのが基本と考えてよいでしょう。

毎月の口座管理料の違いによる20年間の累計負担額の比較を示した棒グラフ
積立中に毎月かかる費用(2026年8月18日現在の掲載水準)を20年間続けた場合の単純累計。最安の月105円と最も高い月589円では約11万6千円の差になります。※2027年1月26日の引落分からは国民年金基金連合会分が105円→120円になるため、各区分とも月15円ずつ増える計算です。

このほか、他の制度へ資産を移すとき(移換時)の手数料にも差があります。iDeCoナビの一覧では4,400円としている先が多い一方、西日本シティ銀行のように11,000円と掲載されている例もあります。受け取り時は振込の都度440円が一般的です。金融機関はあとから変更もできますが、手間と費用がかかるため、最初の選択は慎重に行いましょう。

※手数料は改定されることがあります。上記は同一覧の2026年8月18日現在の掲載内容(2026年9月7日確認)にもとづく整理で、同一覧は各運営管理機関へのアンケート(2026年3月時点)と提供情報をもとに作成されたものです。申し込む前に、必ず各金融機関の公式サイトとiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)で最新の手数料・商品ラインナップをご確認ください。

なお、定期預金中心で積み立てるなら、「毎月かかる費用が安いこと」に加えて、「元本確保型(定期預金)のラインナップと金利」もあわせて確認しておくと安心です。iDeCoの定期預金は運営管理機関が用意した専用商品で、預入期間・金利は商品ごとに決まっています。

よくある質問(FAQ)

iDeCoのお金はいつでも引き出せますか?

原則として60歳になるまで引き出せません。老後資金専用の制度のため、途中で自由に使えない点は理解しておく必要があります。近い将来に使う予定のあるお金は、いつでも解約できる通常の定期預金などで管理しましょう。

受け取るときに税金で損をすることはありますか?

受取時には退職所得控除・公的年金等控除が使えますが、会社の退職金と同時期に一時金で受け取ると控除が重なり、課税が増えることがあります。2026年1月からは、退職金と時期を離す目安が「5年ルール」から「10年ルール」に変わりました。退職金がある人は、受け取り時期を事前に検討しておくと安心です。

iDeCoの定期預金の金利は、銀行の定期預金と同じですか?

同じとは限りません。iDeCoで選べる定期預金は、運営管理機関がラインナップとして用意した専用の商品で、預入期間や金利は商品ごとに決まっています。一般の銀行の店頭金利が上がっても自動的に同じ水準になるわけではなく、新規口座開設者向けのキャンペーン金利のような高い金利も、iDeCoの元本確保型では期待しにくいのが実情です。各運営管理機関の「運用商品一覧」で、商品名・預入期間・金利(時点つき)を必ず確認してください。

毎月かかる費用が安ければ、どこを選んでも同じですか?

費用だけを見れば差は小さくなりますが、元本確保型の商品ラインナップ(どの銀行の定期預金を扱っているか・預入期間・金利)や、コールセンター・サイトの使いやすさは金融機関ごとに異なります。定期預金中心で運用するなら、「毎月の費用が安い」かつ「元本確保型の金利が有利」という2点で比較するとよいでしょう。

掛金の積み立てを途中でやめることはできますか?

資産を引き出すことはできませんが、掛金の拠出を停止して「運用指図者」となり、それまでの資産の運用だけを続けることは可能です。また、掛金の額は1年(12月分の掛金から翌年11月分の掛金の間)に1回変更でき、最低額は月5,000円です。収入や家計の状況が変わったときは、いったん減額して続けるという選択肢もあります。なお、拠出を止めている間も口座管理手数料はかかります。

あとから金融機関(運営管理機関)を変更できますか?

変更できます。ただし手続きに時間がかかるうえ、移換時に4,400円程度(金融機関によってはそれ以上)の手数料がかかるのが一般的で、移換中は運用が止まる期間も生じます。最初の金融機関選びは慎重に行いましょう。

受け取り方にはどんな選択肢がありますか?

60歳から75歳になるまでの間で受け取りを開始でき(60歳から受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要)、方法は①一時金として一括で受け取る(退職所得控除の対象)②5年以上20年以下の有期年金として分割で受け取る(公的年金等控除の対象)③一時金と年金の組み合わせの3つから選べます(③を扱っていない運営管理機関もあります)。どれが有利かは退職金の有無や税状況によって異なるため、受取時期が近づいたら早めに検討しましょう。

iDeCoの定期預金も預金保険(ペイオフ)の対象ですか?

iDeCoで購入した定期預金も、その銀行に預けたほかの預金と合算して、預金保険制度の保護(1金融機関につき元本1,000万円までとその利息等)の対象になります。同じ銀行に多額の預金がある方は、合算されて上限を超えないかを確認しておきましょう。

定期預金と投資信託、どちらを選べばよいですか?

元本割れを避けたい人は定期預金(元本確保型)、長期でお金を増やすことを重視する人は投資信託、というのが基本的な考え方です。iDeCoは途中で配分を変更することもできるため、自分のリスク許容度に合わせて選びましょう。iDeCoの外で余裕資金を運用するなら、SBI新生銀行などネット系の銀行の円定期預金(元本保証・預金保険の対象)と組み合わせて、目的別に預け先を分ける方法もあります。


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