教育資金の一括贈与は2026年3月で終了|既拠出分の扱いと代替策

教育資金の一括贈与の非課税制度は、令和8年(2026年)3月31日までの拠出をもって新規受付が終了しました。これから新たに専用口座を開いて1,500万円をまとめて渡すことはできませんが、すでに拠出した分は制度終了後も引き続き非課税で払い出せます。ここでは、制度の中身と終了後の口座の扱い、そして教育資金を渡す・貯めるこれからの方法を順に整理します。
この制度は2013年度(平成25年度)の税制改正で設けられたもので、30歳未満の子・孫・ひ孫などへ教育資金を一括贈与した場合に、受贈者1人につき最大1,500万円(うち学校以外の教育費=塾や習い事などは最大500万円)まで贈与税がかからない仕組みでした。法令上は「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」と呼ばれます。国税庁も「令和8年4月1日以後については、この特例の適用を受けることはできません」と明記しています(国税庁 タックスアンサー No.4510)。
目次
制度を使わずに1,500万円を渡すと、贈与税は366万円〜450万円
贈与税の暦年課税には「一般税率」と「特例税率」の2つの速算表があります。教育資金の一括贈与は父母・祖父母など直系尊属からの贈与ですので、贈与を受けた年の1月1日時点で受贈者が18歳以上なら特例税率、18歳未満なら一般税率で計算します(国税庁 タックスアンサー No.4408)。
非課税制度を使わずに1,500万円をそのまま贈与した場合、基礎控除110万円を差し引いた1,390万円に速算表を当てはめると、贈与税額は次のようになります。
| 適用する速算表 | 計算式 | 贈与税額 |
|---|---|---|
| 特例税率 (受贈者が18歳以上の子・孫) | 1,390万円 × 40% − 190万円 | 366万円 |
| 一般税率 (受贈者が18歳未満の子・孫など) | 1,390万円 × 45% − 175万円 | 450.5万円 |
つまり、教育資金の一括贈与の非課税制度を使わずに1,500万円を一度に渡すと、贈与税だけで366万円〜450万円ほどかかり、手元に残るのは約1,050万円〜1,134万円という計算になります。決して無視できる金額ではありません。この制度は、こうした多額の贈与税負担なしに教育資金をまとめて前渡しできる点が、大きなメリットとして使われてきました。
すでに拠出した分は、制度終了後も非課税のまま使える
適用期間は、平成25年(2013年)4月1日から令和8年(2026年)3月31日までに拠出された教育資金が対象です。期限の延長はなく、2026年3月31日で新規の受付(新たな拠出)は終了しました。
一方で、2026年3月31日までに教育資金管理契約に基づいて拠出された資金は、制度終了後も引き続き非課税の対象です(国税庁)。すでに専用口座を開設している場合、原則として受贈者が30歳になるまで、教育費の領収書を金融機関に提出して非課税で引き出すことができます。制度が終了したからといって、過去の拠出分が直ちに課税されるわけではありません。ただし、契約期間中に贈与者が亡くなった場合や契約終了時に残額がある場合には、相続税・贈与税がかかることがあります。書類の管理や払い出しのルールはこれまでどおり求められますので、利用中の人は引き続き注意が必要です。
なお、この制度には次のような要件もありました。受贈者は契約を結ぶ日において30歳未満であること、贈与者は受贈者の直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母など)に限られること、平成31年4月1日以後の拠出分については受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用を受けられないこと、などです。
これからの渡し方は「都度贈与」が基本になる
新規の一括贈与はできなくなりましたが、子や孫に教育費を渡す方法がなくなったわけではありません。主な代替策を整理します。
| 方法 | ポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 都度贈与(必要な教育費の直接負担) | 扶養義務者が、必要な都度、学費などを直接支払う分は贈与税の対象外 | 「必要な都度」が前提。まとめて前渡しすると課税対象になり得る |
| 暦年贈与(年110万円の基礎控除) | 1年あたり110万円までは贈与税がかからない | 2024年以降の贈与は、相続前の加算対象期間が段階的に7年へ延長 |
| 相続時精算課税制度 | 2024年以降、年110万円の基礎控除が新設され使いやすくなった | 一度選択すると暦年課税に戻せないなどの制約がある |
| 住宅取得等資金の贈与の非課税 (教育資金以外だが現行制度) | 直系尊属からの住宅取得資金が、省エネ等住宅は1,000万円・その他の住宅は500万円まで非課税(国税庁 No.4508) | 対象は令和6年1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの贈与。受贈者の年齢・所得・床面積などの要件と申告が必要 |
とくに、扶養義務者(親・祖父母など)が必要な都度、学費や入学金などを直接支払う「都度贈与」は、通常必要と認められる範囲の教育費であればもともと贈与税がかからず、使い勝手のよい方法です。一括贈与の制度が終わった後は、こうした方法を家庭の資金計画に合わせて組み合わせて考えることになります。判断に迷う場合は、税理士など専門家や、国税庁・各金融機関の案内で確認しましょう。
教育資金の受け皿は定期預金と個人向け国債(2026年9月時点の金利)
制度の有無にかかわらず、教育資金は「使う時期までに、減らさず・確実に準備する」ことが大前提です。入学金や授業料は支払う日が決まっており、そのタイミングで元本が目減りしている事態は避けたいからです。値動きのある商品ではなく、定期預金のように満期と金利が決まっている商品が基本の受け皿になります。仕組預金のように高い表示金利の裏で満期が延びる商品とは、性格がまったく違う点にご注意ください。
追い風なのは、日本銀行が2026年6月16日の金融政策決定会合で金融市場調節方針を変更し、政策金利を1.0%程度へ引き上げたことを受けて、預金金利そのものが上がってきていることです(7月31日の会合では据え置かれました)。かつて「預けても増えない」といわれた定期預金にも、選び方で差がつく状況になっています。なお日本銀行が公表している日程によると、次回の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日に開かれ、結果の公表と総裁の記者会見は18日に行われます。金利がこの先どう動くかは決まっていませんので、預け入れの時期は会合の結果を待つかどうかではなく、お金を使う予定の時期から逆算して決めるのが基本です。
| 預け先の例 | 金利(税引前・年率) | 時点・条件 |
|---|---|---|
| 大手行の定期預金(1年) | 年0.500% | 三菱UFJ銀行 スーパー定期・大口定期(2026年9月10日現在) |
| ゆうちょ銀行の定期貯金(1年) | 年0.500% | 2026年9月7日現在。2026年8月10日の引き上げで年0.400%から上昇。5年ものは年1.000%、10年ものは年1.250% |
| 地方銀行のネット専用支店の定期預金(1年) | 年1.600% | 香川銀行 セルフうどん支店「超金利トッピング定期預金」(2026年9月10日現在・お一人さま100万円まで)など、預入上限つきの商品が中心 |
| 個人向け国債(固定5年) | 年2.240% (税引後 約1.785%) | 2026年9月募集分・第186回債(財務省)。募集は2026年9月3日〜30日、発行は10月15日。発行後1年間は原則として中途換金できません |
ゆうちょ銀行の引き上げには、教育資金の預け先として知っておきたい注意点があります。同行の公式FAQによれば、通常貯金・通常貯蓄貯金は2026年8月10日以降、引き上げ後の金利が適用されますが、定期貯金・定額貯金などの定期性の貯金は「預入時の利率を約定利率とする」ため、すでに預け入れ済みの分は満期まで預入時の金利のままです(満期時の取り扱いを自動継続にしている定期貯金は、継続日時点の利率が適用されます)。また、預入期間の途中で払い戻すと、預入時の適用金利よりも低い金利が適用されます。「金利が上がったから預け替えよう」が必ず得になるとは限らない、ということです。なお定額貯金は、預入日から6か月経過後は自由に払い戻せる、預入後3年までは6か月ごとの段階金利という商品性で、定期貯金とは別の商品です(ゆうちょ銀行 金利一覧)。
期間の選択肢という意味では、個人向け国債も教育資金と相性があります。財務省が公表する2026年9月募集分の表面利率は次のとおりで、3タイプとも前月から上昇しました。

たとえば100万円を1年もの定期預金に預けた場合の税引後の利息の目安は、年0.500%なら約3,984円、年1.600%なら約12,749円です(利息には20.315%の税金がかかります)。金額の絶対値は大きくありませんが、元本が保証されたまま、預け先を選ぶだけで生じる差と考えれば無視できません。なお、ネット専用支店の高金利商品は1人100万円までなど預入上限が設けられていることが多いため、教育資金のようにまとまった額は複数の預け先に分ける前提で考えましょう。満期の時期をずらして分散する定期預金のラダリングという方法も、学費のように支払い時期が複数回に分かれる資金と相性がよい考え方です。
預金は預金保険制度(ペイオフ)により、1金融機関あたり預金者1人につき元本1,000万円までとその利息等が保護されます(預金保険機構)。保護は「銀行単位」で判定されるため、同じ銀行の本支店とネット専用支店の残高は合算される点にご注意ください。
ネット系では、SBI新生銀行のように円普通預金が年0.400%、SBI証券と連携するSBIハイパー預金が年0.550%(いずれも2026年9月10日時点・税引前)と、入学金の支払い前など使う時期が近い待機資金の置き場所として使いやすい金利を提示している銀行もあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 制度は終了しましたが、今から教育資金口座を新しく開設できますか?
A. できません。令和8年(2026年)4月1日以後の拠出は、この特例の対象外です(国税庁 No.4510)。すでに開設済みの口座からの払い出しは、従来どおりの手続きで続けられます。
Q. 受贈者が30歳になったとき、口座に残額があるとどうなりますか?
A. 教育資金管理契約は原則として受贈者が30歳に達した時点で終了し、使い切れなかった残額は贈与税の課税対象となります(在学中などの一定の場合は40歳まで延長されることがあります)。制度終了後も、この残額のルールは変わりません。
Q. 契約期間中に贈与者(祖父母など)が亡くなった場合はどうなりますか?
A. 拠出した時期や受贈者の状況により取り扱いが異なりますが、契約終了前に贈与者が死亡した場合、一定の管理残額が相続税の課税対象となることがあります。すでに口座をお持ちの場合は、取扱金融機関や税理士に現在の残高と適用ルールを確認しておくと安心です。
Q. 「都度贈与」なら、いくらまで贈与税がかかりませんか?
A. 金額の一律の上限が定められているわけではなく、扶養義務者が「必要な都度」支払う、通常必要と認められる範囲の教育費であれば贈与税はかかりません。学費を学校へ直接振り込むなど、使途と時期が明確になる形にしておくのが実務上のポイントです。まとめて数年分を前渡しすると課税対象になり得ます。
Q. 教育資金を貯めている口座の金利が上がったら、預け替えたほうが得ですか?
A. 一概には言えません。定期預金・定期貯金は預入時の金利が満期まで適用されるのが原則で、途中で解約すると当初の適用金利より低い利率で計算し直されるのが一般的です。ゆうちょ銀行も公式FAQで「預け替え等はお客さまのご判断で」としています。満期までの残り期間・中途解約時の利率・使う予定の時期を確認したうえで判断し、迷う場合は満期を待って新しい金利の商品に預け替えるほうが無難です。
Q. 教育資金の準備に、個人向け国債と定期預金のどちらが向いていますか?
A. 使う時期までに1年以上の余裕があるかどうかが分かれ目です。個人向け国債は発行後1年間は原則として中途換金できず、換金時には直前2回分の利子相当額が差し引かれます。逆に、5年後の入学に向けた資金のように使う時期が先で動かす予定がないお金であれば、2026年9月募集分の固定5年(年2.240%)のように定期預金より高い利率を確保できます。
まとめ
教育資金の一括贈与の非課税制度は2026年3月31日の拠出をもって終了しましたが、すでに拠出した分は従来どおり非課税で使えます。これから渡す分は「都度贈与」や暦年贈与など現行の方法を組み合わせ、受け皿は使う時期に合わせて定期預金・個人向け国債から選ぶ——という順で考えると整理しやすくなります。税制・金利・適用条件は随時見直されますので、実行の前に国税庁および各金融機関の公式サイトで最新の内容をご確認ください。

















