定期預金のラダリングとは?満期を分ける預け方【2026年9月】

当分使う予定のないまとまった資金を、少しでも有利に・安全に管理したい――そんなときに役立つのが「定期預金のラダリング」という考え方です。日本が利上げ局面に入り、預金金利が実際に動き始めたことで、その利点があらためて見直されています。仕組みと使いどころを、実際の金利を使いながらわかりやすく解説します。
目次
定期預金のラダリングとは
「定期預金のラダリング」という言葉をご存じでしょうか。金融の世界では、満期日をずらした複数の金融商品を組み合わせて持つことを「ラダリング(Laddering)」と言います。語源は「はしご(ladder)」。はしごの段のように満期日が1段1段続いていくイメージです。
円定期預金でも同じように、満期日をずらした複数の定期預金を持つことで、さまざまな効果が得られます。少しわかりにくいので、具体的な例で確認してみましょう(以下の金利は仕組みを説明するための例で、実在する商品の金利ではありません)。
たとえば、当分使う予定のないお金が500万円あったとします。これを預入期間5年・年0.500%の円定期預金に1口でまとめて預けたのがAさん。いっぽう、1年もの(年0.100%)・2年もの(年0.200%)・3年もの(年0.300%)・4年もの(年0.400%)・5年もの(年0.500%)の定期預金5口に100万円ずつ分けて預けたのがBさんです。いわゆる「ラダリング」を使っているのがBさんですね。
効果①・・・金利上昇に備える
何ごともなく5年間が過ぎた場合、単純計算で受け取った利息の合計はAさん>Bさんになります。金利が高い5年ものに全額を預けているのですから、当然と言えば当然です。
ただし、ここで忘れてはいけないのは、Bさんは毎年、100万円の定期預金が満期を迎えているということです。「Aさん>Bさん」と確実に言えるのは、「Bさんが毎年の満期で何もしなかった」という前提に立った場合だけです。
もし1年後に日本の金利がさらに上昇し、たとえば年1.000%の定期預金が使えるようになったとしたらどうでしょう。1年後・2年後・3年後に迎える満期の都度、より高い金利の定期預金に預け替えられれば、5年後に受け取る利息はAさん<Bさんと逆転することもあり得ます。満期が分散していれば、金利が上がったときにそのチャンスを取りこぼしにくくなるのがラダリングの大きな利点です。
効果②・・・急な出費に備える
理由はなんでもよいのですが、たとえば「子どもが急に留学したいと言い出した」「結婚する家族に少し援助したい」といった事情で、まとまったお金が必要になったとします。ここでは、手元の流動性のある資金(普通預金など)とは別に100万円が必要になったとしましょう。
Aさんは「500万円の定期預金を中途解約してお金を用立てる」ことになります。いっぽうBさんは、5口あるうちの1口を中途解約するだけで済み、場合によっては満期まで待つだけで足りることもあります。
ご存じのとおり、定期預金は原則として満期まで持つべきものです。中途解約すると、約定していた金利ではなく「中途解約利率」が適用され、受け取れる利息が大きく減ってしまうためです(元本は原則そのまま戻ります)。Aさんは500万円すべてを中途解約しなければならず、利息が大幅に目減りします。Bさんは1口(100万円)を解約するだけで済むので、中途解約の影響を受ける資金を「1口/5口」に抑えられます。残る400万円については、しっかり当初の利息を受け取れるわけです。
※これは厳密には「ラダリング(複数の満期日に分ける)」というより、定期預金を小口に分ける効果(500万円を1口ではなく100万円×5口にする効果)ですが、ラダリングを使うと自然にこの効果も得られます。
実際の金利で見る、期間ごとの差
ここまでは説明用の数字でしたが、実際の定期預金の金利はどうなっているのでしょうか。大手行の一例として、三菱UFJ銀行のスーパー定期(2026年9月2日現在・税引前)を期間ごとに並べると、次のようになります。

1年もの年0.500%に対して5年ものは年1.000%と、預入期間が長くなるほど金利が高くなる「右肩上がり」の形になっています(同行は10年ものも取り扱っており、2026年9月2日現在で年1.250%です)。ラダリングは、この右肩上がりの部分を取りにいきながら、毎年満期が来る状態を作る方法だと考えるとイメージしやすくなります。
この金利で、500万円を「5年もの1本」に預けた場合と、「100万円×5口(1〜5年)」に分けた場合の受取利息(単利・概算)を比べると、次のとおりです。
| 預け方 | 適用金利(2026年9月2日現在) | 各満期までの利息(税引前・再預入なし) |
|---|---|---|
| 5年もの1本に500万円 | 年1.000% | 250,000円 |
| ラダリング:1年もの100万円 | 年0.500% | 5,000円 |
| ラダリング:2年もの100万円 | 年0.650% | 13,000円 |
| ラダリング:3年もの100万円 | 年0.800% | 24,000円 |
| ラダリング:4年もの100万円 | 年0.900% | 36,000円 |
| ラダリング:5年もの100万円 | 年1.000% | 50,000円 |
| ラダリング合計 | ― | 128,000円 |
※三菱UFJ銀行「円預金金利」(2026年9月2日現在・税引前)をもとにした単利の概算です。利息には20.315%の源泉分離課税がかかるため、税引後の目安は5年もの1本が約199,212円、ラダリング合計が約101,996円(いずれも税引前×0.79685)となります。実際の受取額は、うるう年を含む日数計算や付利単位の扱いによって多少前後します。
数字だけを見ると「5年もの1本」が有利に見えます。これは「5年間、金利がまったく動かず、途中でお金も使わなかった場合」の比較だからです。ラダリングが効いてくるのは、①途中で金利が上がって、満期を迎えた資金をより高い金利に預け替えられたとき、②途中でお金が必要になり、一部だけ解約すれば済んだとき——の2つの場面です。ラダリングは利息を最大化する方法ではなく、金利の先行きが読めないときに「読み違えたときの損失」を小さくする方法だと理解しておくと、判断を誤りにくくなります。
なお、期間が長いほど金利が高いとは限りません。たとえばSBI新生銀行のインターネット限定「パワーダイレクト円定期預金30」(30万円以上)は、2026年9月2日現在で1年もの・2年ものがいずれも年1.200%、3年もの・4年ものがいずれも年1.560%、5年ものが年1.950%と、同じ金利が2期間続く階段状になっています(3年もの・4年ものは8月時点の年1.500%から、5年ものは年1.800%から、それぞれ引き上げられました)。この形の場合、2年ものではなく1年ものを、4年ものではなく3年ものを選んだほうが、同じ金利で満期が早く来る(=預け替えの機会が早く来る)ぶん有利になります。ラダリングを組む前に、その銀行の期間別の金利表を必ず確認してください。
定期預金のラダリングの理想形は?
定期預金は、原則として預入期間が長いほど金利が高くなります。かつての超低金利下では必ずしもそうではありませんでしたが、金利のある時代に入った今は、預入期間の長い定期預金ほど高い金利が適用されるという「本来の姿」に戻りつつあります。
したがって、預入期間の長い定期預金を組み合わせてラダリングするのが基本です。定期預金の最長を5年としている銀行が多いのですが、先ほどのBさんの方法をさらに続けると、次第に理想的な形へと変わっていきます。
- 1年後・・・1年ものの100万円が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
- 2年後・・・2年ものの100万円が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
- 3年後・・・3年ものの100万円が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
- 4年後・・・4年ものの100万円が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
- 5年後・・・5年ものの100万円が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
- 6年後・・・1年後に預け入れた5年ものが満期 → 5年もの定期預金に預け入れ(以下くり返し)
いかがでしょうか。最初は満期日を分散させるために期間の短い(=低金利の)定期預金も使いますが、5年経つとより金利の高い5年もの定期預金だけで、毎年きれいに満期を迎える形が完成します。資金を5口に分けて管理する、というわかりやすい方法で、無理なくラダリングが組めるわけです。
いまラダリングが見直されている理由
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、そこから段階的な利上げを重ねてきました。直近では2026年6月16日の金融政策決定会合で政策金利が「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げられ、1995年以来およそ31年ぶりの水準になっています。2026年7月31日の会合では調節方針は変更されず、年1.0%程度が維持されました(日本銀行「金融市場調節方針に関する公表文」)。次回の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日で、結果は18日に公表される予定です(日本銀行「金融政策決定会合の運営」)。
そして、この利上げが預金者の手元に届いたのが2026年8月3日です。三菱UFJ銀行では同日から普通預金が年0.400%(改定前は年0.300%)、スーパー定期(1年)が年0.500%になり、2026年9月2日現在もこの水準が維持されています。同じ8月3日に、変動型の貸出金利の基準となる短期プライムレートも年2.125%から年2.375%へ引き上げられています。預金金利が「動くもの」になったわけです。
債券市場でも金利の上昇が続いており、2026年9月1日には長期金利(新発10年物国債の利回り)が一時 年3.000%をつけ、約30年ぶりに3%台に乗りました(日本経済新聞・NHKほか)。ただし、長期金利がそのまま預金金利になるわけではありません。長期金利は債券市場で決まる利回りで、住宅ローンの固定金利などの基準になるもの。預金金利は各金融機関が政策金利や資金調達の環境をふまえて個別に決めています。実際、9月に入ってからも大手行の店頭の預金金利は8月の水準が維持されています。「市場金利が動く=預け先の金利がすぐ動く」ではないことは、ラダリングを組むうえで押さえておきたい点です。
今後の金利動向は誰にも断定できません。市場では次回会合での追加利上げを見込む声も伝えられていますが、日本銀行は次の利上げの時期を示していませんし、金利が下がる可能性もあります。だからこそ、先行きを当てにいくのではなく、満期を分散して「上がったら預け替える」余地を残しておくラダリングの考え方が活きてきます。全額を1本の長期定期に固定してしまうと、その後に金利が上がっても満期まで動かしにくくなるためです(最新の金利情勢は日本銀行や各行公式でご確認ください)。
満期が来たとき、何を比べればよいか
ラダリングの効き目は「満期のたびに条件を比べ直す」ことで生まれます。金利だけを見て決めると、かえって不便になることもありますので、次の4点をセットで確認しておくと判断がぶれません。
| 確認すること | 見るポイント | 備考 |
|---|---|---|
| 期間別の金利の形 | 右肩上がりか、同じ金利が2期間続く階段状か | 同じ金利なら短いほうを選ぶと預け替えが早く来る |
| 最低預入額 | 1口30万円以上・100万円以上などの下限 | 口数は最低預入額から逆算して決める |
| キャンペーン・限定金利の条件 | 対象者(新規口座開設限定など)・預入期間・適用期限 | 店頭金利と混同しない。条件を満たせるかを先に確認 |
| 満期後の扱い | 自動継続か、普通預金へ自動解約か | 自動継続のままだと預け替えの機会を逃しやすい |
たとえばSBI新生銀行では、新規に口座を開いた方限定の「スタートアップ円定期預金」が2026年9月1日から引き上げられ、3ヵ月もの・1年ものがいずれも年1.700%になっています(インターネットは30万円以上・2026年9月2日現在・税引前。口座開設月を含む当初3ヵ月目の月末までの取扱い)。こうした限定金利は対象者と期限が決まっているため、ラダリングの一段として使う場合は、満期後にどの金利で預け替えられるかまで含めて考えておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q. 定期預金を中途解約するとどうなりますか?
満期前に解約すると、約定していた金利ではなく「中途解約利率」が適用され、受け取れる利息が大きく減るのが一般的です(元本は原則そのまま戻ります)。だからこそ定期預金は満期保有が基本で、ラダリングで小口に分けておくと、急な出費でも一部の解約だけで対応でき、影響を最小限にできます。
Q. 何口に分けるのがよいですか?
決まった正解はありませんが、「毎年1回、満期が来る」形にすると管理がわかりやすくなります。銀行の定期預金は最長5年のところが多いため、5口に分けると1年ごとに満期が巡ってくる形が作れます。口数を増やすほど預け替えの機会は増えますが、1口あたりの金額が小さくなり管理の手間も増えます。最低預入額(30万円以上・100万円以上など)が設定されている商品もあるため、口数は最低預入額から逆算して決めるのが現実的です。
Q. 金利が下がっていく局面では、ラダリングは不利になりますか?
結果として、長期の定期預金に全額をまとめておいたほうが有利になることはあります。ただし、金利がこの先上がるか下がるかを事前に当てることはできません。ラダリングは「どちらに動いても極端に外さない」ための方法で、利息を最大化する方法ではないという点は押さえておきましょう。
Q. 銀行が破綻したら預金はどこまで守られますか?(ペイオフ)
預金保険制度により、定期預金や利息の付く普通預金などの一般預金等は、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます(当座預金・利息の付かない普通預金などの決済用預金は全額保護/預金保険機構)。まとまった資金は複数の金融機関に分けて預けると、より安心して高めの金利を狙えます。ラダリングと組み合わせて「銀行も期間も分散する」と、安全性と利回りのバランスを取りやすくなります。
Q. 満期が来たらどうなりますか?
多くの定期預金は「自動継続(元金継続・元利継続)」と「自動解約(普通預金へ入金)」を選べます。ラダリングでは満期のたびに金利を見直し、より条件のよい定期へ預け替えるのがポイントです。自動継続のままにしておくと預け替えのチャンスを逃すことがあるため、満期のタイミングは把握しておきましょう。
Q. 定期預金以外の商品もラダリングできますか?
できます。たとえば個人向け国債は毎月発行されており、満期の異なる回号を少しずつ買い足していけば、定期預金と同じ考え方で満期を分散できます。ただし個人向け国債は発行後1年間は原則として中途換金ができず、1年経過後の換金でも直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます(財務省)。商品ごとに換金の条件が違いますので、同じ「はしご」に混ぜる場合は、それぞれの制約を確認しておきましょう。
ラダリングは、耳慣れない言葉かもしれませんが、決して難しい話ではありません。より高度な資金管理の方法もありますが、まず頭の片隅に置いてほしいのは、お金をいくつかに小分けして管理することは、どんな場面でも重要になるということです。この記事の金利は2026年9月2日時点のもので、以後に改定されることがあります。ラダリングを組む前に、預入期間ごとの金利・最低預入額・中途解約の扱いを各金融機関の公式サイトでお確かめください。大切なご資産を、少しでも有利に・安全に活用していただければ幸いです。















