タンス預金は約60兆円から47兆円へ減少|金利上昇時代の現金管理

自宅の現金を銀行預金へ移すイメージ(タンス預金と金利上昇)

かつて増え続けていた「タンス預金」(家計や企業が銀行に預けず、自宅の金庫や引き出しで保管している現金)は、近年は減少に転じています。日本銀行の新紙幣(2024年7月発行)の流通分析などをもとにした推計では、タンス預金は2023年初めごろの約60兆円をピークに、2025年7月時点ではおよそ47兆円まで減ったとみられています(日本経済新聞の推計、2025年9月時点)。背景には、長く続いた低金利が終わって預金に利息が付くようになったことや、相次ぐ強盗事件で自宅に大金を置くリスクが意識されたことがあります。

目次

そもそもタンス預金はどれくらいあるのか

タンス預金は「自宅にしまわれて動かない現金」のため正確な金額はわかりませんが、日本銀行は紙幣の発行枚数の動きから推計しています。商取引にはあまり使われないはずの高額紙幣(1万円札)が、実際の取引需要を超えて増えている部分を「価値の貯蔵を目的に手元へ滞留した現金=タンス預金」とみなす方法です。1万円札の発行残高は2004年末の約70億枚から2024年末には約115億枚へと大きく増えており、日銀はこうした分析から、紙幣発行残高(2024年度で金額ベース約118兆円)の半分程度が非取引需要とみられ、タンス預金が約60兆円規模にのぼる可能性を示しています。

もともとタンス預金が膨らんだのは、①銀行に預けても利息がほとんど付かなかったこと、②マイナンバー制度の導入や相続税の基礎控除縮小(2015年)で資産を把握されにくい形で持っておきたいという心理が一部にあったこと、などが理由とされてきました。本記事のもとになった第一生命経済研究所のレポート(2017年3月公表)も、当時のこうした増加傾向を取り上げたものです。

なぜ減り始めたのか

潮目が変わったのは金利です。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを続けています。2026年6月16日の金融政策決定会合では、政策金利を「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げました。これは1995年以来およそ31年ぶりの高い水準です(最新の方針は日本銀行の公式サイトでご確認ください)。

この利上げを受けて、大手銀行を中心に普通預金・定期預金の金利を引き上げる動きが広がっています。たとえば三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクは、2026年8月3日から円普通預金金利を年0.300%から年0.400%へ引き上げると発表しました。数年前まで年0.001%という超低水準が当たり前だったことを思えば、大きな変化です(金利は時点により変わります)。こうして「預ければ利息が付く」状況に戻ったことに加え、近年相次いだ強盗事件で自宅保管のリスクが意識されたことも重なり、タンス預金は減少へ向かったとみられます。

タンス預金のデメリットを整理する

自宅で現金を持つこと自体は本人の自由ですが、「銀行はどうせ利息が付かないし、引き出すと手数料も取られる」という思い込みからタンス預金を増やしてしまうのは、いくつかの点で損になりがちです。

  • 利息がいっさい付かない:金利が戻ってきた今、銀行の定期預金やキャンペーン金利を使えば、わずかでも着実に利息が付きます。タンス預金は預けても増えません。
  • 盗難・火災・紛失に保証がない:銀行預金は不正に引き出された場合の補償制度がありますが、自宅の現金が盗まれても誰も補償してくれません。耐火金庫でも、長時間の高温には対応できないものが大半です。
  • 「手数料はどこでも取られる」は誤解:SBI新生銀行やauじぶん銀行などのネット銀行・新しい銀行は、企業努力でATM手数料や振込手数料を一定回数まで無料にしているケースが多くあります。今使っている銀行で手数料が取られるからといって、すべての銀行が同じとは限りません。

タンス預金と銀行預金の違い

比較の観点タンス預金(自宅保管)銀行預金
利息付かない(0円)普通預金・定期預金で利息が付く(金利上昇で改善)
盗難・火災時の保証なし(自己責任)不正引き出しの補償制度あり/破綻時もペイオフで保護
引き出し・送金の手数料かからないが手元にある分だけネット銀行なら一定回数無料のところも多い
災害時の対応持ち出せた分のみ本人確認による特例払い戻し等の対応実績あり

金利のある時代の「預け先」の考え方

金利が戻ってきたとはいえ、普通預金は8月から年0.400%になる水準で、置いておくだけで大きく増えるわけではありません。それでも、利息が1円も付かないタンス預金に比べれば確実なプラスです。すぐに使わない余裕資金は、定期預金やキャンペーン金利を使うとさらに差がつきます。たとえば三井住友信託銀行は、2026年7月1日〜8月31日の期間限定で、新たに500万円以上を預け入れる個人などを対象に、5年ものの円定期預金で最大年2.20%の「夏の定期預金キャンペーン」を実施しています(適用条件・対象金額・期間が決まっているため、必ず各行公式で最新の内容をご確認ください)。

銀行預金がタンス預金より安心なのは、預金保険制度(ペイオフ)があるためです。万一銀行が破綻しても、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までと、その利息等が保護されます(決済用預金は全額保護)。まとまった資金がある場合は、1行に集中させず複数の銀行に分けておけば、1,000万円の枠を超える部分もカバーしやすくなります。タンス預金にはこうした制度的な保護がありません。

なお、安全に少しでも有利な金利を狙うなら、ネット銀行の定期預金やボーナス時期のキャンペーン金利を比較するのも有効です。キャンペーン金利は適用条件・対象期間・最低預入額が決まっているので、必ず条件を確認してから利用しましょう。

よくある質問(FAQ)

タンス預金は違法ですか?

自分のお金を自宅で保管すること自体は違法ではありません。ただし、相続や贈与で得たお金を申告せずに隠す目的で保管すると、税務上の問題になることがあります。

金利が上がったら、タンス預金を銀行に戻したほうがよいですか?

すぐに使う予定のない余裕資金であれば、利息が付く普通預金・定期預金に置くほうが、利息の分だけ有利です。日常的に必要な現金だけ手元に残し、残りは安全性と利便性で選んだ銀行に分散して預けるのが現実的です。

1,000万円を超える預金はどうすればよいですか?

ペイオフで保護されるのは1金融機関あたり元本1,000万円+利息までです。これを超える資金は、複数の金融機関に分けて預けると、各行で1,000万円までの保護を受けられます。

銀行預金の金利がかつてより高くなったとはいえまだ高水準とは言えませんが、利息が1円も付かず、盗難・火災の保証もないタンス預金に大金を寝かせておくのは安易と言えます。安易にタンス預金へ走らず、複数の銀行を活用して、資産の有効活用と正しい防衛を心がけましょう。

参考:第一生命経済研究所の金融レポート(2017年3月公表)はこちら


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