日本銀行の3つの役割と金融政策|利上げと預金金利【2026年7月】

日本銀行は「日銀(にちぎん)」とも呼ばれる、日本の中央銀行です。その役割としてよく挙げられるのが「発券銀行」「政府の銀行」「銀行の銀行」の3つです。日本銀行がこの3つの役割を担っているのは間違いありません。ただ、この3つの役割の細かな説明は教科書や他のサイトにお任せして、このコラムでは少し別の角度から、日本銀行の目的と役割を整理してみたいと思います。
ここ数年、日本銀行の総裁が報道やニュースに登場する機会が増えました。話題の中心になっているのは「発券銀行」や「銀行の銀行」としての話というより、金融政策(通貨及び金融の調節)に関するものでしょう。たとえば「大規模金融緩和」「マイナス金利」「イールドカーブ・コントロール」、そして近年の「マイナス金利の解除」「利上げ」といった言葉です。これらはいずれも、日本銀行法に定められた「通貨及び金融の調節」という役割に関わるものです。このコラムでは、この「通貨及び金融の調節」を中心に話を進めます。
目次
日本銀行法
日本銀行は「日本銀行法」という法律によって、その目的や理念が定められています。日本銀行のためにわざわざ専用の法律があるわけです。日本銀行法は全体が10章で構成され、日本銀行に関する定義やルールが細かく定められていますが、その第1章「総則」に、日本銀行が果たすべき役割が定義されています。
日本銀行の目的
日本銀行法は、まず日本銀行の目的を定義するところから始まります。目的として定義されているのは、次の2つの条文です(以下、原文のまま)。
- 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
- 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
かみ砕くと、「①銀行券(お札)を発行する」「②通貨及び金融の調節を行う」「③金融機関どうしの資金決済を円滑にし、信用秩序を維持する」といった目的が定義されています。よく言われる3つの役割に照らすと、①は「発券銀行」、③は「銀行の銀行」にあたります。(もう1つの役割とされる「政府の銀行」は、国のお金〔税金や社会保険料など〕の出し入れを扱う業務を指しますが、これは日本銀行法上の目的の条文からは読み取りにくい部分です。)
このコラムで掘り下げたいのは「②の通貨及び金融の調節」です。日本銀行法では、この点について続けて次のように定めています。
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
かみ砕くと、「通貨(円)と金融を調節する役割を与えるけれど、いいかげんに調節してはいけない。調節するときは常に『物価の安定』を意識し、それが『国民経済の健全な発展』につながるという考え方で行わなければならない」ということです。つまり、「物価を安定させ、日本経済が健全に発展するよう努める」という役割と責任が、日本銀行にあるわけです。
「物価の安定」とは
「物価の安定」も、少しあいまいな言葉です。何をもって「安定」とするかは時代によっても変わります。日本銀行は2013年1月に、物価の安定の目安として「消費者物価の前年比上昇率2%」という物価安定の目標を導入しました。当時の日本はデフレ(物価の下落)に苦しんでおり、この2%目標を掲げて大規模な金融緩和を進めてきた経緯があります。
この2%という物価安定の目標は、2013年から日本銀行の金融政策運営の軸であり続けています。2023年4月に植田和男総裁が就任した後も、この2%目標は引き継がれています。賛否が分かれてきたのは目標そのものというより、「大規模金融緩和」「マイナス金利」「イールドカーブ・コントロール」といった個々の手段が、物価の安定に向けた最善の選択肢かどうかという点でした。
2%の安定的なインフレが続いた場合…
では、仮に前年比2%のインフレが安定的に10年続いたら、今100円で売られているものは10年後にいくらになるでしょうか。複利で計算すると次のようになります。
- 今:100円
- 1年後:102.00円
- 2年後:104.04円
- 3年後:106.12円
- 4年後:108.24円
- 5年後:110.41円
- 6年後:112.62円
- 7年後:114.87円
- 8年後:117.17円
- 9年後:119.51円
- 10年後:121.90円
今100円で買えるものが、10年後には120円以上を出さないと買えなくなる計算です。引き出しに100円玉を10年間しまっておくと、100円は100円のままですが、買えるものは減っていきます。お金の額面は同じでも、価値(買える量)は約2割下がるわけです。
言いかえると、今100万円を持っていて10年後に価値が2割減るなら、その100万円を10年後に120万円ほどにしておかないと「今の価値を維持できなかった」ことになります。そうならないように、定期預金・株式・債券などの金融商品や不動産で「お金に働いてもらう」ことが意味を持ってきます。

ちなみに直近の物価は、5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が前年比+1.4%と、4カ月連続で1%台の上昇となっています(総務省)。物価上昇のペースは落ち着きつつありますが、「モノの値段は上がらない」という前提はすでに過去のものになっています。
金融政策は「正常化」局面へ(2026年7月時点)
日本銀行の金融政策は、ここ数年で大きな転換点を迎えました。長く続いたマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールについて、日本銀行は2024年3月に大規模な金融緩和策を転換(マイナス金利政策を解除)しました。その後は経済・物価情勢の改善に合わせて段階的に利上げを進めており、2026年6月16日の金融政策決定会合では、金融市場調節方針を変更して政策金利を「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げました(日本銀行)。これは1995年以来、約31年ぶりの高い水準です。次回の金融政策決定会合は2026年7月30日〜31日に開かれる予定です(日本銀行 公表予定)。
金利は「借りる側」と「預ける側」の双方に効いてきます。長期金利(新発10年国債利回り)は2026年7月上旬に一時2.9%前後まで上昇し、その後2.7%台へ低下するなど振れ幅の大きい動きが続いています。相場の水準は日々動きますので、最新の値は日本銀行・財務省・報道機関の公表値でご確認ください。
2026年8月、預金金利はどう変わるのか
今回の利上げを受けて、預金者にとって見逃せない変更が予定されています。三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3行は、普通預金金利を年0.300%から年0.400%へ引き上げると発表しており、いずれも2026年8月3日から適用されます(三井住友信託銀行も年0.400%)。三菱UFJと三井住友にとっては、旧行時代の1992年以来およそ34年ぶりの高い水準です。あわせて、変動型の貸出金利の基準となる短期プライムレートも、2026年8月3日から年2.125%→年2.375%へ引き上げられます(三菱UFJ銀行 2026年6月16日発表)。
| 項目 | 現在(2026年7月10日現在) | 2026年8月3日から |
|---|---|---|
| 大手行の普通預金金利 | 年0.300% | 年0.400%(3メガバンク・三井住友信託銀行) |
| 短期プライムレート(貸出の基準) | 年2.125% | 年2.375%(+0.25%) |
| 参考:三菱UFJ銀行 スーパー定期(1年) | 年0.400% | 定期預金金利の改定は各行が別途公表 |
ここで気づいておきたいのは、ローンの基準金利が+0.250%動くのに対し、普通預金は+0.100%にとどまるという非対称です。金利のある世界では「借りる負担」のほうが先に、大きく増えます。だからこそ預ける側は、金利がついた資金を「置きっぱなしにしない」ことが効いてきます(金利は変更されることがあります。最新の適用金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください)。
インフレ局面で、預金とどう向き合うか
物価が上がる局面では、現金や普通預金のまま置いておくと、前述のとおりお金の「実質的な価値」が目減りしていきます。とはいえ、生活防衛資金や近く使う予定のあるお金まで値動きのある商品に回すのは堅実とは言えません。まずは「安全に確保しておくお金」と「ある程度の期間を置けるお金」を分けて考えることが出発点になります。
当面使わないお金については、満期まで動かさない前提で定期預金を活用するのも一つの方法です。預金は預金保険制度(ペイオフ)により、1金融機関あたり預金者1人につき元本1,000万円までとその利息等が保護されるため、安全性を重視する人にとって基盤になります。安全性を保ったまま利回りを取りにいくなら、個人向け国債も選択肢です。2026年7月募集分は変動10年=1.800%(初回適用利率)、固定5年=1.950%、固定3年=1.560%と、金利上昇を映して水準が切り上がっています(財務省)。
銀行預金でも、預け先による差は広がっています。たとえばSBI新生銀行では、円普通預金が年0.400%、SBI証券と連携するSBIハイパー預金が年0.550%(いずれも2026年7月12日現在・税引前)と、大手行の普通預金より高い水準が提示されています。新規口座開設のお客さま限定の「スタートアップ円定期預金」も2026年7月10日に金利が引き上げられました。金利・適用条件は変わり得ますので、預ける前に必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本銀行の総裁は誰ですか?
A. 2026年7月時点の総裁は植田和男氏です。2013年から2023年まで黒田東彦氏が務め、2023年4月に植田氏が就任しました。物価安定の目標(2%)は両氏のもとで一貫して掲げられています。
Q. 日銀が利上げをすると、預金金利はすぐ上がりますか?
A. 時間差があります。2026年6月16日の利上げを受けた大手行の普通預金金利の改定(年0.300%→年0.400%)は、2026年8月3日からの適用です。定期預金の金利改定は各行が別途公表するため、預け入れの前に最新の店頭金利を確認しましょう。
Q. 利上げは家計にとってプラスですか、マイナスですか?
A. 立場によって変わります。預金者は受け取る利息が増えますが、変動型のローンを借りている人は返済負担が増える方向に働きます。今回も預金は+0.100%、貸出の基準となる短期プライムレートは+0.250%と、影響の大きさは同じではありません。
Q. インフレに備えるには、定期預金だけで十分ですか?
A. 定期預金は元本が保証され安全性が高い反面、物価上昇率を下回る金利であれば、実質的な価値は目減りします。使う時期に応じて、預金・個人向け国債・その他の方法を組み合わせて考えるのが現実的です。
日本銀行の役割は、お札を発行することや銀行間の決済を支えることにとどまらず、「物価の安定」を通じて私たちの暮らしや資産の価値に深く関わっています。金融政策のニュースを目にしたときは、それが自分の預金やローンにどう影響するのかという視点で読むと、より身近に感じられるはずです。

















