日本銀行の3つの役割と金融政策|利上げと預金金利【2026年9月】

日本銀行は「日銀(にちぎん)」とも呼ばれる、日本の中央銀行です。その役割としてよく挙げられるのが「発券銀行」「政府の銀行」「銀行の銀行」の3つです。日本銀行がこの3つの役割を担っているのは間違いありません。ただ、この3つの役割の細かな説明は教科書や他のサイトにお任せして、このコラムでは少し別の角度から、日本銀行の目的と役割を整理してみたいと思います。
ここ数年、日本銀行の総裁が報道やニュースに登場する機会が増えました。話題の中心になっているのは「発券銀行」や「銀行の銀行」としての話というより、金融政策(通貨及び金融の調節)に関するものでしょう。たとえば「大規模金融緩和」「マイナス金利」「イールドカーブ・コントロール」、そして近年の「マイナス金利の解除」「利上げ」といった言葉です。これらはいずれも、日本銀行法に定められた「通貨及び金融の調節」という役割に関わるものです。このコラムでは、この「通貨及び金融の調節」を中心に話を進めます。
目次
日本銀行法
日本銀行は「日本銀行法」という法律によって、その目的や理念が定められています。日本銀行のためにわざわざ専用の法律があるわけです。日本銀行法は全体が10章で構成され、日本銀行に関する定義やルールが細かく定められていますが、その第1章「総則」に、日本銀行が果たすべき役割が定義されています。
日本銀行の目的
日本銀行法は、まず日本銀行の目的を定義するところから始まります。目的として定義されているのは、次の2つの条文です(以下、原文のまま)。
- 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
- 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
かみ砕くと、「①銀行券(お札)を発行する」「②通貨及び金融の調節を行う」「③金融機関どうしの資金決済を円滑にし、信用秩序を維持する」といった目的が定義されています。よく言われる3つの役割に照らすと、①は「発券銀行」、③は「銀行の銀行」にあたります。(もう1つの役割とされる「政府の銀行」は、国のお金〔税金や社会保険料など〕の出し入れを扱う業務を指しますが、これは日本銀行法上の目的の条文からは読み取りにくい部分です。)
このコラムで掘り下げたいのは「②の通貨及び金融の調節」です。日本銀行法では、この点について続けて次のように定めています。
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
かみ砕くと、「通貨(円)と金融を調節する役割を与えるけれど、いいかげんに調節してはいけない。調節するときは常に『物価の安定』を意識し、それが『国民経済の健全な発展』につながるという考え方で行わなければならない」ということです。つまり、「物価を安定させ、日本経済が健全に発展するよう努める」という役割と責任が、日本銀行にあるわけです。
「物価の安定」とは
「物価の安定」も、少しあいまいな言葉です。何をもって「安定」とするかは時代によっても変わります。日本銀行は2013年1月に、物価の安定の目安として「消費者物価の前年比上昇率2%」という物価安定の目標を導入しました。当時の日本はデフレ(物価の下落)に苦しんでおり、この2%目標を掲げて大規模な金融緩和を進めてきた経緯があります。
この2%という物価安定の目標は、2013年から日本銀行の金融政策運営の軸であり続けています。2023年4月に植田和男総裁が就任した後も、この2%目標は引き継がれています。賛否が分かれてきたのは目標そのものというより、「大規模金融緩和」「マイナス金利」「イールドカーブ・コントロール」といった個々の手段が、物価の安定に向けた最善の選択肢かどうかという点でした。
2%の安定的なインフレが続いた場合…
では、仮に前年比2%のインフレが安定的に10年続いたら、今100円で売られているものは10年後にいくらになるでしょうか。複利で計算すると次のようになります。
- 今:100円
- 1年後:102.00円
- 2年後:104.04円
- 3年後:106.12円
- 4年後:108.24円
- 5年後:110.41円
- 6年後:112.62円
- 7年後:114.87円
- 8年後:117.17円
- 9年後:119.51円
- 10年後:121.90円
今100円で買えるものが、10年後には120円以上を出さないと買えなくなる計算です。引き出しに100円玉を10年間しまっておくと、100円は100円のままですが、買えるものは減っていきます。お金の額面は同じでも、価値(買える量)は約2割下がるわけです。
言いかえると、今100万円を持っていて10年後に価値が2割減るなら、その100万円を10年後に120万円ほどにしておかないと「今の価値を維持できなかった」ことになります。そうならないように、定期預金・株式・債券などの金融商品や不動産で「お金に働いてもらう」ことが意味を持ってきます。

ちなみに直近の物価は、2026年7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)が前年同月比+1.8%(総合は+1.9%)でした(総務省統計局・2026年8月21日公表/2025年=100の新基準)。上昇率は2%の目標を下回る水準が続いていますが、伸びは前月の+1.6%から拡大しており、「モノの値段は上がらない」という前提は、すでに過去のものになっています。
金融政策は「正常化」局面へ(2026年9月時点)
日本銀行の金融政策は、ここ数年で大きな転換点を迎えました。長く続いたマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールについて、日本銀行は2024年3月に大規模な金融緩和策を転換(マイナス金利政策を解除)しました。その後は経済・物価情勢の改善に合わせて段階的に利上げを進めており、2026年6月16日の金融政策決定会合では金融市場調節方針を変更し、政策金利を「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げています。これは1995年以来、約31年ぶりの高い水準です。続く2026年7月31日の会合では金融市場調節方針の変更は行われず、政策金利は年1.0%程度で据え置かれました(日本銀行「金融市場調節方針に関する公表文」)。
次回の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日に開かれ、結果は18日に公表される予定です(日本銀行「金融政策決定会合の運営」)。市場では次の一手を先取りする動きも出ており、たとえばブルームバーグは、8月30日午前のオーバーナイト・インデックス・スワップ市場で9月会合での利上げ確率が約88%まで織り込まれたと伝えています。ただし、日本銀行はまだ何も決めていません。市場の織り込みは集計主体や時点によって変わりますので、「9月に利上げされる/見送られる」と決めつけず、会合の結果が公表されてから確認するのが確実です。
長期金利が約30年ぶりに3%台へ(2026年9月1日)
2026年に入ってからの大きな動きが、長期金利の上昇です。2026年9月1日の東京債券市場では、長期金利の指標である新発10年物国債の利回りが一時 年3.000% をつけ、約30年ぶりに3%の大台に乗りました(日本経済新聞・NHKほか。上昇の背景として、日銀の早期利上げ観測、米国の金利上昇、原油高、財政への警戒などが同時に指摘されています)。
ここで、預金者として整理しておきたいのが「どの金利の話なのか」という点です。ニュースで語られる金利には、少なくとも次の3つがあり、動き方も影響先も違います。
| 金利の種類 | 何で決まるか | 主に影響するもの |
|---|---|---|
| 政策金利(無担保コールレート翌日物) | 日本銀行の金融政策決定会合 | 短期の金利全般の出発点。現在は年1.0%程度 |
| 短期プライムレート | 政策金利の動きを受けて各行が決定 | 住宅ローンの変動金利などの基準 |
| 長期金利(新発10年物国債利回り) | 債券市場での売買 | 住宅ローンの固定金利やフラット35の基準 |
長期金利が3%台に乗ったことは、そのまま「預金金利が3%になる」という意味ではありません。預金金利は各金融機関が政策金利や資金の調達環境をふまえて決めるもので、長期金利と連動して自動的に動くわけではないからです。とはいえ、金利全体が上向く局面であることは確かで、預け先を見直す価値は高まっています。相場の水準は日々動きますので、最新の値は財務省の国債金利情報や日本銀行の公表値でご確認ください。
預金と貸出の金利は、いまこうなっている(2026年9月2日現在)
6月の利上げを受けた金利改定は、2026年8月3日から実際に適用されました。注目したいのは、大手行の普通預金金利が年0.300%から年0.400%へ引き上げられたことです。その水準は9月に入っても維持されています。三菱UFJ銀行の円預金金利は2026年9月2日現在で普通預金が年0.400%、スーパー定期(1年)が年0.500%で、8月の改定後から変わっていません(同行「円預金金利」2026年9月2日現在・税引前)。適用金利や改定日は銀行ごとに異なりますので、ほかの銀行については各行公式サイトの最新の店頭金利をご確認ください。
あわせて、変動型の貸出金利の基準となる短期プライムレートも2026年8月3日から年2.125%→年2.375%へ引き上げられ、9月2日時点でもこの水準が適用されています(三菱UFJ銀行「短期プライムレート」年2.375%・2026年8月3日より適用)。
| 項目 | 改定前(2026年8月2日まで) | 2026年9月2日現在 |
|---|---|---|
| 普通預金(三菱UFJ銀行) | 年0.300% | 年0.400% |
| スーパー定期 1年(三菱UFJ銀行) | 年0.400% | 年0.500% |
| スーパー定期 5年(三菱UFJ銀行) | ― | 年1.000% |
| スーパー定期 10年(三菱UFJ銀行) | ― | 年1.250% |
| 短期プライムレート(貸出の基準) | 年2.125% | 年2.375%(+0.250%) |
※改定後の値は三菱UFJ銀行公式サイト(2026年9月2日現在・税引前)。短期プライムレートの改定前の水準は同行の従前表示(年2.125%・2026年2月2日より適用)によります。金利は変更されることがあります。
ここで気づいておきたいのは、ローンの基準金利が+0.250%動くのに対し、普通預金は+0.100%にとどまるという非対称です。金利のある世界では「借りる負担」のほうが先に、大きく増えます。だからこそ預ける側は、金利がついた資金を「置きっぱなしにしない」ことが効いてきます。
預け先による差はここまで開いている
普通預金が年0.400%になったといっても、預け先を選べばさらに上の水準があります。下のグラフは、同じ2026年9月2日時点で確認できる代表的な円預金の年利率(税引前)を並べたものです。

たとえばSBI新生銀行では、円普通預金が年0.400%、SBI証券と連携するSBIハイパー預金が年0.550%、インターネット限定のパワーダイレクト円定期預金30(30万円以上)は1年もの年1.200%・3年もの年1.560%・5年もの年1.950%となっています(いずれも2026年9月2日現在・税引前)。3年ものと5年ものは、8月時点の年1.500%・年1.800%から引き上げられました。新規口座開設のお客さま限定の「スタートアップ円定期預金」も2026年9月1日から金利が引き上げられ、3ヵ月もの・1年ものがいずれも年1.700%になっています(インターネットは30万円以上/口座開設月を含む当初3ヵ月目の月末までの取扱い)。ほかに期間限定の「トリプル円定期キャンペーン」(金利年1.25%相当・税引前・上乗せ後、2026年9月10日まで)も実施されています。キャンペーン金利や新規口座開設限定の金利には、預入期間・最低預入額・対象者などの条件が付きますので、申し込む前に必ず公式サイトで条件と適用期間をご確認ください。
安全性を保ったまま利回りを取りにいくなら、個人向け国債も選択肢です。直近の2026年8月募集分(発行日2026年9月15日)は変動10年=年1.87%(初回適用利率)、固定5年=年2.06%、固定3年=年1.71%でした(財務省・令和8年8月31日現在)。次回の募集は2026年9月3日~30日で、適用利率は募集開始時に公表されます。個人向け国債は発行後1年経過すればいつでも国の買取による中途換金ができますが、その際は直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。
利息はいくら増えるのか(税引後の目安)
預金の利息には20.315%の源泉分離課税(国税15.315%・地方税5%)がかかります。100万円を1年間預けた場合の受取利息を、税引前・税引後で並べると次のようになります(単利・概算)。
| 預け先・商品(年利率) | 税引前の利息 | 税引後の目安 |
|---|---|---|
| 普通預金 年0.400% | 4,000円 | 約3,187円 |
| 大手行の定期預金 1年 年0.500% | 5,000円 | 約3,984円 |
| ネット系の円定期 1年 年1.200% | 12,000円 | 約9,562円 |
| 個人向け国債 固定5年 年2.06%(初年度分の目安) | 20,600円 | 約16,415円 |
※100万円を1年間預けた場合の概算。税引後は税引前×0.79685で計算しています。実際の利息は計算方法・付利単位・預入日数により異なります。個人向け国債は半年ごとに年2回利子が支払われ、固定5年は満期まで利率が変わりません。
金額としては大きくありませんが、同じ100万円でも預け先を変えるだけで受取利息が3倍近く変わることは押さえておきたいところです。一方で、金利の高さだけで決めないことも大切です。定期預金は満期まで動かさない前提の商品で、途中で解約すると中途解約利率が適用され、当初の約定利率よりも大幅に低い利息しか受け取れません。
インフレ局面で、預金とどう向き合うか
物価が上がる局面では、現金や普通預金のまま置いておくと、前述のとおりお金の「実質的な価値」が目減りしていきます。とはいえ、生活防衛資金や近く使う予定のあるお金まで値動きのある商品に回すのは堅実とは言えません。まずは「安全に確保しておくお金」と「ある程度の期間を置けるお金」を分けて考えることが出発点になります。
| お金の性格 | 置き場所の考え方 | 備考 |
|---|---|---|
| 生活防衛資金(生活費の6か月分が目安) | いつでも引き出せる普通預金 | 金利より流動性を優先する |
| 1~5年以内に使う予定があるお金 | 使う時期に合わせた期間の定期預金 | 満期を使う時期に合わせると中途解約を避けやすい |
| 当面使う予定のないお金 | 長めの定期預金・個人向け国債など | 元本の安全性と換金の条件を確認する |
預金は預金保険制度(ペイオフ)により、1金融機関あたり預金者1人につき元本1,000万円までとその利息等が保護されます(預金保険機構)。金利を求めて複数の銀行に分散する場合も、この1,000万円という単位が判断の目安になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本銀行の総裁は誰ですか?
A. 2026年9月時点の総裁は植田和男氏です。2013年から2023年まで黒田東彦氏が務め、2023年4月に植田氏が就任しました。物価安定の目標(2%)は両氏のもとで一貫して掲げられています。
Q. 長期金利が3%台になったら、定期預金の金利も3%になりますか?
A. なりません。長期金利は債券市場で決まる10年物国債の利回りで、住宅ローンの固定金利やフラット35の基準にはなりますが、預金金利を直接決めるものではありません。預金金利は各金融機関が政策金利(現在は年1.0%程度)や資金調達の環境をふまえて個別に決めています。ただし、金利全体が上向く局面では預金金利が見直される機会も増えますので、満期のたびに条件を比べる意味は大きくなります。
Q. 日銀が利上げをすると、預金金利はすぐ上がりますか?
A. 時間差があります。2026年6月16日の利上げを受けた大手行の普通預金金利の改定(年0.300%→年0.400%)が実際に適用されたのは2026年8月3日で、およそ1か月半の開きがありました。定期預金の金利改定も各行が別途公表するため、預け入れの前に最新の店頭金利を確認しましょう。
Q. すでに預けている定期預金の金利も上がりますか?
A. 上がりません。定期預金は預け入れた時点の約定利率が満期まで適用されるのが原則です。新しい金利が適用されるのは、満期後に預け替える分や、新規に預け入れる分です。自動継続の設定にしている場合は、継続の時点の金利で継続されます。
Q. 利上げは家計にとってプラスですか、マイナスですか?
A. 立場によって変わります。預金者は受け取る利息が増えますが、変動型のローンを借りている人は返済負担が増える方向に働きます。今回も預金は+0.100%、貸出の基準となる短期プライムレートは+0.250%と、影響の大きさは同じではありません。
Q. インフレに備えるには、定期預金だけで十分ですか?
A. 定期預金は元本が保証され安全性が高い反面、物価上昇率を下回る金利であれば、実質的な価値は目減りします。使う時期に応じて、預金・個人向け国債・その他の方法を組み合わせて考えるのが現実的です。
日本銀行の役割は、お札を発行することや銀行間の決済を支えることにとどまらず、「物価の安定」を通じて私たちの暮らしや資産の価値に深く関わっています。金融政策のニュースを目にしたときは、それが自分の預金やローンにどう影響するのかという視点で読むと、より身近に感じられるはずです。なお、この記事に掲載した金利は2026年9月2日時点で各金融機関・公的機関が公表していたもので、その後に改定されることがあります。実際に預け入れる際は、必ず各金融機関の公式サイトで最新の金利と条件をお確かめください。
















