個人向け国債と定期預金はどちらが有利か【2026年8月の利率で比較】

預け先をじっくり比べる家計のイメージ

預金金利が動き出したことで、「定期預金に置いたままでよいのか」「個人向け国債のほうが有利ではないか」と迷う方が増えています。どちらも元本が保証され、国や銀行がきちんと払い戻す仕組みを持った安全性の高い預け先ですが、利率の決まり方も、途中でお金を引き出したいときの扱いも、まったく別の設計になっています。この記事では、2026年8月募集分の個人向け国債の利率を財務省の公表値で確認し、同時点の定期預金金利と、税引後の手取りで並べて比較します。数字を出したうえで、「自分の場合はどちらを選ぶのか」を判断できるところまで整理します。

目次

いま差を生んでいるのは、利率の「決め方」の違い

定期預金の金利は、各銀行が日本銀行の政策金利や資金調達の状況をふまえて自行で決めます。同じ1年ものでも銀行によって金利が違うのは、そのためです。

これに対して個人向け国債の利率は、財務省があらかじめ決めた算式で機械的に決まります。募集のたびに市場の国債利回り(基準金利)を当てはめて計算するため、どの金融機関で買っても利率は同じです。算式は3タイプで異なります(財務省「個人向け国債 商品概要」・2026年8月18日確認)。

  • 変動10年:基準金利 × 0.66(半年ごとに見直し)
  • 固定5年:基準金利 − 0.05%(満期まで固定)
  • 固定3年:基準金利 − 0.03%(満期まで固定)

3タイプとも年0.05%の最低金利保証があり、実勢金利がどれだけ下がってもこれを下回りません。ただし後述するとおり、いまの金利水準ではこの下限が働く場面はなく、「将来また金利が下がったときの下支え」として意味を持つ条件だと理解しておくのが実態に合っています。

2026年8月募集分の利率を、税引後まで並べて確かめる

2026年8月に募集されている3タイプの発行条件は次のとおりです(いずれも募集期間 2026年8月6日〜8月31日、発行日 2026年9月15日。財務省の各発行条件ページで2026年8月18日に確認)。税引後の利率は財務省が公表している値で、当編集部の計算ではありません。

タイプ(回号)基準金利適用利率(税引前)利率(税引後)満期
変動10年(第197回)2.83%年1.87%
※初回半年分
年1.4901095%10年
固定5年(第185回)2.11%年2.06%年1.6415110%5年
固定3年(第195回)1.74%年1.71%年1.3626135%3年

同じ2026年8月18日時点の定期預金と並べると、水準の差がはっきりします。三菱UFJ銀行のスーパー定期は1年 年0.5000%・3年 年0.8000%・5年 年1.0000%、普通預金は年0.4000%です。ゆうちょ銀行の定期貯金も1年 年0.500%・3年 年0.800%・5年 年1.000%・10年 年1.250%(2026年8月17日現在)と、ほぼ同じ水準にそろっています。

個人向け国債3タイプと大手行の定期預金・普通預金の税引後年利率を比べた棒グラフ
個人向け国債は2026年8月募集分(発行日2026年9月15日)の財務省公表値。変動10年は初回半年分の利率で、以降は半年ごとに見直されます。定期預金・普通預金は三菱UFJ銀行の2026年8月18日現在の金利から税引後(×0.79685)で算出しました。

基準金利がいちばん高い「変動10年」が、いちばん高い利率にならない理由

表をよく見ると、少し意外なことが起きています。基準金利がもっとも高いのは変動10年の2.83%なのに、実際に受け取る利率は年1.87%で、固定5年の年2.06%を下回っています。

原因は「× 0.66」という掛け目です。変動10年は基準金利をそのまま受け取れるのではなく、およそ3分の2に圧縮されます。一方で固定5年・固定3年は基準金利からわずか0.05%・0.03%を差し引くだけです。つまり、長期金利が上がった局面ほど、変動10年と固定タイプの差は「掛け目のぶんだけ」開いていくという構造になっています。

「金利が上がる局面では変動10年が有利」という説明をよく見かけますが、それは半年ごとに利率が見直されるという性質の話であって、いま受け取れる利率が高いという意味ではありません。2026年8月募集分に限っていえば、当面の受取額で見る限り固定5年が最も高い利率です。変動10年が固定5年を上回るには、この先の基準金利がさらに上昇して掛け目の不利を埋める必要があります。将来の金利がどう動くかは誰にも断定できないため、ここは「どちらが得か」ではなく「金利が下がったときに取り残されたくないか、それとも今の水準を確定させたいか」という好みの問題として考えるのが妥当です。

100万円を置いたら、手取りはどれだけ違うか

利率の差を金額に直します。いずれも単利・満期まで保有・税引後の概算です。

預け先税引後の年利率100万円を預けた場合の受取利息(税引後・概算)
個人向け国債 固定5年年1.6415110%5年で 約82,000円
定期預金 5年(大手行の店頭金利 年1.000%)年0.79685%5年で 約39,800円
個人向け国債 固定3年年1.3626135%3年で 約40,900円
定期預金 3年(大手行の店頭金利 年0.800%)年0.63748%3年で 約19,100円

5年で比べると、受け取る利息は約4万2,000円の差になります。3年でも約2万1,800円の差です。もっとも、これは大手行の店頭金利と比べた場合の数字であり、ネット銀行やキャンペーン金利まで含めれば定期預金側の水準はもっと上がります。比べるときは預入期間と適用条件(新規資金限定・上限額・エントリーの要否)をそろえることが前提になります。

なお、変動10年についてはこの計算をしていません。決まっているのは初回半年分の利率だけで、10年間の受取総額を今の時点で計算することはできないからです。「変動10年は年1.87%」と書かれた試算を見かけたら、それは初回の利率が10年続くと仮定した数字であることに注意してください。

「途中で換金すると元本割れする」は誤解

個人向け国債をためらう理由として最も多いのが、この誤解です。結論からいうと、個人向け国債は中途換金しても元本割れしません

財務省は商品概要で、償還金額を「額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)」と明記しています。市場で売るのではなく国が額面で買い取る仕組みだからです。差し引かれるのは直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685、つまり直近1年ぶんの受取済みの利息(税引後相当)だけです。元本には手がつきません。

誤解の出どころは、名前の似た別商品との混同にあります。銀行や証券会社の窓口では「新窓販国債」(新型窓口販売方式による国債)も売られていますが、こちらは市場でいつでも売却できる代わりに、そのときの市場価格で売ることになるため売却損が出ることがあります。財務省も両者の比較表で、個人向け国債は「元本割れのリスクなし」、新窓販国債は「元本割れのリスクあり」と明確に書き分けています。買うときに商品名を取り違えないことが、この誤解を避ける唯一の方法です。

定期預金の中途解約とは、減り方の性質が違う

定期預金を満期前に解約した場合も元本は戻りますが、約束していた金利ではなく、銀行が定める中途解約利率で計算し直され、利息が大きく削られます。詳しくは定期預金の中途解約利率の記事で解説していますが、預けた期間全体にさかのぼって低い利率が適用されるのが一般的です。

個人向け国債の差引額が「直前2回分」に限られるのとは、削られ方の性質が異なります。長く持ってから換金するほど、個人向け国債のほうが手元に残る利息の割合は大きくなると考えてよいでしょう。

本当に効いてくる制約は「最初の1年間は動かせない」こと

元本割れがないぶん、個人向け国債には別の制約があります。発行後1年を経過するまでは、原則として中途換金ができません。定期預金であれば、利息が減ることを受け入れれば翌日でも解約できます。この差は小さくありません。

例外として、災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けた場合と、保有者本人が亡くなった場合は、1年を待たずに換金できると財務省が定めています。ただしこれはあくまで特例であり、通常の資金繰りには使えません。

したがって、1年以内に使う可能性のあるお金を個人向け国債に入れるのは避けるべきです。生活防衛資金や、住宅の頭金・教育費など時期が読めない支出は、金利が低くても普通預金や短期の定期預金に置いておくほうが安全です。

1,000万円の線引きがあるのは、じつは定期預金のほう

「預金は保護されるが、国債は保護されない」という言い方をされることがあります。これは正確ではありません。

預金保険制度(ペイオフ)は金融機関が破綻したときに預金者を守る制度で、保護されるのは預金・定期積金・元本補てん契約のある金銭信託などです。一般預金等は1金融機関につき預金者1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます(預金保険機構)。国債は預金ではないため、この制度の対象ではありません。制度の詳細は預金保険制度(ペイオフ)の記事にまとめています。

ただし個人向け国債は、元本の返済も半年ごとの利子の支払いも、発行体である国が行います(財務省)。リスクを引き受けている相手が「銀行の経営」ではなく「国の信用」に変わる、というのが正しい理解です。しかも購入額に上限はありません

この違いは、まとまった資金を持つ人ほど効いてきます。定期預金で2,000万円を安全に置こうとすれば複数の金融機関に分散させる手間がかかりますが、個人向け国債にはその制約がありません。退職金など大きな資金の置き場所を考えるときは、利率だけでなく「分ける手間が要るかどうか」も比較の対象になります。

結局どちらを選ぶか|「いつ使うお金か」から逆算する

利率だけで決めると、たいてい判断を誤ります。当編集部としては、次の順番で考えることをおすすめします。

  1. 1年以内に使う可能性がある:普通預金か短期の定期預金へ。個人向け国債は1年間換金できないため対象外です。
  2. 3〜5年は動かさないと決められる:2026年8月時点では、個人向け国債の固定5年(年2.06%)・固定3年(年1.71%)が、大手行の同期間の定期預金(年1.000%・年0.800%)を明確に上回っています。ネット銀行やキャンペーン金利の定期預金と比べる場合は、適用条件(新規資金限定・上限額・預入期間)まで含めて確認してください。
  3. 10年単位で置く/将来の金利上昇に付いていきたい:変動10年が候補です。掛け目0.66のぶん当面の利率は下がりますが、金利が上がれば半年ごとに受取利子が増え、下がっても年0.05%を下回りません
  4. 1,000万円を超える資金がある:定期預金なら分散が前提になります。手間を減らしたい場合、個人向け国債は有力な選択肢になります。

また、どちらか一方に寄せる必要はありません。1年以内に使う分は普通預金、使う予定のない分は個人向け国債の固定5年、その中間は定期預金、と使う時期ごとに分けて置くのが最も無理のない形です。満期の時期を意図的にずらす考え方は定期預金のラダリングと同じ発想です。

なお、個人向け国債は1万円から1万円単位で、証券会社・銀行・ゆうちょ銀行などの取扱金融機関で購入できます。毎月募集されているため、「今月を逃すと買えない」ということはありません。利率は募集のたびに変わりますので、申し込む前に必ずその月の発行条件を確認してください。

よくある質問(FAQ)

変動10年の利率は、半年ごとに下がることもありますか?

あります。適用利率は「基準金利 × 0.66」で半年ごとに計算し直されるため、市場の金利が下がれば受け取る利子も減ります。ただし年0.05%の最低金利保証があり、これを下回ることはありません。基準金利は毎年2月と8月に決定されます。

発行から1年以内に、どうしてもお金が必要になったら?

原則として中途換金はできません。例外は災害救助法の適用対象となる大規模な自然災害で被害を受けた場合保有者本人が亡くなった場合の2つで、この場合は1年を待たずに換金できます。それ以外の資金需要には対応できないため、1年以内に使う可能性のあるお金は最初から入れないのが前提の商品です。

満期を迎えた個人向け国債は、定期預金のように自動で継続されますか?

償還期限になると額面金額が払い戻されます。引き続き国債で運用したい場合は、あらためてその時点で募集されている回号を購入することになります。そのときの利率は今回の条件とは異なりますので、償還の時期が近づいたら最新の発行条件を確認してください。

利子にかかる税金は定期預金と同じですか?

どちらも20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)が受取時に差し引かれる点は同じです。この記事の「税引後」の数字は、いずれもこの税率を引いた後の値です。なお個人向け国債は、障害者等の非課税貯蓄制度(いわゆるマル優・特別マル優)の適用を受けて非課税にできる場合があります。対象になるかどうかは税務署などにご確認ください。

まとまった資金でも1万円単位で買えますか。上限はありますか?

最低1万円から1万円単位で購入でき、購入額の上限はありません。中途換金も額面1万円単位で、一部だけ換金することもできます。ただし金融機関によっては口座の管理手数料がかかる場合があるため、購入前に確認しておくと安心です。

比較するときに外してはいけない3点

最後に、この記事で確認したことを判断の順に整理します。

  • 利率は税引後で比べる。2026年8月募集分の個人向け国債は固定5年が年2.06%(税引後 年1.6415110%)で、大手行の5年定期(年1.000%)の2倍を超えます。
  • 「変動=有利」ではない。掛け目0.66があるため、基準金利が最も高い変動10年の当面の利率は固定5年を下回っています。金利上昇への追随性と、いま確定できる利率のどちらを取るかで選びます。
  • 元本割れよりも、1年間動かせないことのほうが実務的な制約。元本は中途換金でも額面どおり戻りますが、最初の1年は原則として換金できません。

金利も発行条件も毎月変わります。最新の利率や適用条件は、財務省および各金融機関の公式サイトで必ずご確認ください。


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