新NISAと定期預金は、どちらか一方を選ぶものではありません。数年以内に使うお金や減っては困るお金は定期預金に、10年以上使わないお金はNISAに入れると役割が分かれます。
定期預金は、預けた日に満期までの金利が決まり、元本1,000万円までとその利息が預金保険で守られます。NISAは運用益に税金がかからない口座で、中で買う投資信託や株式は値下がりすることがあります。
当編集部の試算では、100万円を年0.500%の1年定期に預けたときの税引後の利息は約3,984円です。投資信託の価格がわずか0.4%動くと、この利息と同じだけ増えたり減ったりします。
定期預金は預けた日に利息が決まり、NISAの中身は毎日値動きする
定期預金とは、期間を決めて預け、その間は原則引き出さない代わりに、普通預金より高い金利が満期まで続く預金のことです。いくら受け取れるかは、預けた時点で計算できます。
NISA(少額投資非課税制度)は、口座の中で買った株式や投資信託の配当と売却益に税金をかけない制度です。どの商品を買うかは自分で決め、その価格は市場で毎日変わります。
金融庁の案内では、2024年からのNISAは年間の投資枠がつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計360万円です。生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)です。
非課税で持ち続けられる期間は無期限で、口座を開ける期間も恒久化されています。いつ始めても、同じ枠を使えます。
NISAで買えるのは株式や投資信託で、預金はこの口座に入らない
国税庁のタックスアンサーでは、NISAで非課税になるのは、つみたて投資枠と成長投資枠で取得した上場株式等の配当と譲渡益です。定期預金の利息を非課税にする制度ではありません。
預金の利息には、NISAを使っていても20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)が差し引かれます。下の試算の定期の手取りも、この税率を差し引いた金額です。
つまり、税金がかからない利点はNISAの中で値上がりした分にだけ働きます。値上がりしなければ、非課税の効果もありません。
NISAで買った投資信託は、預金保険の対象に入らない
預金保険機構によると、保護の対象は預金、定期積金、元本補てん契約のある金銭信託などです。銀行の窓口で買った投資信託も、預金ではないため対象外です。
定期預金は、1つの金融機関ごとに元本1,000万円までと利息が守られます。名寄せの仕組みと1,000万円を超えた部分の扱いは、預金保険制度(ペイオフ)の解説をご覧ください。
国の制度だから元本が守られる、と考えるのは誤りです。NISAが国の制度なのは税金の扱いの部分で、口座の中の商品の価格はだれも保証していません。
100万円を1年置いたときの当サイト試算
同じ100万円を、1年定期とNISAの投資信託に入れた場合の1年後を比べました。定期の金利は、2026年10月29日時点でネット銀行の1年もの円定期にあった年0.500%(税引前)を使っています。
| 1年後の状態 | 1年定期(年0.500%) | NISAの投資信託 | 課税口座の投資信託 |
|---|---|---|---|
| 定期は満期・投資信託は価格が5%上昇 | +3,984円(税引後) | +50,000円(非課税) | +39,843円(税20.315%を差し引き) |
| 投資信託の価格が0.4%上昇 | +3,984円 | +4,000円 | +3,187円 |
| 投資信託の価格が5%下落 | +3,984円 | −50,000円 | −50,000円 |
| 投資信託の価格が10%下落 | +3,984円 | −100,000円 | −100,000円 |
※当サイト試算。定期は単利・満期一括受け取りで、利息5,000円から20.315%を差し引いた金額。投資信託は信託報酬などの費用を含めず、1年後に売却したと仮定。
定期の手取りは、相場がどう動いても3,984円で変わりません。投資信託は、価格が0.4%上がるだけで定期の手取りと並び、5%動けば10倍以上の差が出ます。
NISAの非課税が効くのは、表の1行目のように値上がりした場合です。課税口座と比べた差は、5%上がったときで約1万円になります。
NISAで出た損失は、ほかの利益と差し引けない
国税庁は、NISA口座で取得した株式等を売って生じた損失はないものとみなされ、損益通算も繰越控除もできないとしています。下がった年の損を、翌年以降の利益で取り戻す税金上の手当てはありません。
上の表で10%下がった場合、課税口座なら別の口座の利益と差し引けますが、NISAではできません。値下がりのまま売る可能性が高いお金ほど、NISAの非課税の恩恵は小さくなります。
NISAの枠は消えないため、定期を満期前に崩して移す必要はない
NISAの年間投資枠は、その年に使わなくても制度がなくなるわけではありません。金融庁の案内では、売却した商品の取得額の分は、翌年以降に枠を再び使えます。
一方、定期預金を満期前に解約すると、約定の金利より低い中途解約利率になります。
当編集部が2026年10月21日に確認した三井住友銀行のスーパー定期の説明書では、期間1年の定期を6か月未満で解約すると、普通預金の利率で利息を計算します。
中途解約利率の決まり方と計算例は、定期預金の中途解約利率とはで紹介しています。投資に回すなら、満期の日にあわせて移しても枠は失われません。
2027年1月から、0〜17歳もつみたて投資枠を使える
金融庁によると、2027年1月からつみたて投資枠の年齢要件がなくなり、0〜17歳も口座を開けます。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円です。
使えるのはつみたて投資枠だけで、17歳までは原則として払い出せず、12歳以降は一定の要件のもとで払い出せるとされています。
払い出す時期と金額が決まっている入学金などは、満期日を支払いの前に合わせた定期預金のほうが予定を立てやすくなります。
使う時期ごとに、預け先は次のように分かれる
どちらに入れるかは、利回りの比較より先に、そのお金をいつ使うかで決まります。当編集部は次の区分で考えています。
- 1年以内に使うお金と、急な出費に備える生活費の数か月分は、普通預金や1年以内の定期に置く。中途解約で利息が減る心配が少ない。
- 1〜5年後に使う金額と時期が決まっているお金(進学・住宅の頭金・車の買い替え)は、満期を支払いの前にそろえた定期預金にする。
- 10年以上使わないお金は、値下がりした年があっても売らずに待てる金額だけNISAで運用する。
1〜5年のお金を定期以外で持つ方法には、最低金利の保証がある個人向け国債もあります。利率と中途換金の条件の違いは、国債と定期預金の比較で解説しています。
定期預金が1,000万円を超えるときは、1つの銀行にまとめず、預金保険の範囲に収まるよう分けて預けてください。
満期をきっかけに投資を考えた人の声
当編集部が確認したところ、次のような体験談がありました。
- 10年以上、自動継続のまま預けていた定期について、これ以上は継続できないという満期の知らせが届いた。窓口に行くと、投資を始めてはどうかと声をかけられた。
- 新NISAを始めたのを機に、定期に入れていたお金を少しずつインデックスファンドへ移した。相場がよい時期だったこともあり、資産は増えていった。
- NISAを始めて数か月、損切りした分もあって評価額はマイナスだった。それでも満期になった定期のお金から、さらに追加で買ってしまったと振り返っていた。
いずれも個人の体験で、結果は始めた時期や相場によって大きく変わります。満期の知らせが届いたら、そのお金をいつ使うかを先に決めてから、預け直すか投資に回すかを選んでください。
金利と制度の内容は記載時点のものです。預け入れや口座開設の前に、各行の最新の金利表と金融庁のNISAの案内でご確認ください。