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タンス預金は約47兆円に減少|金利上昇時代の現金の置き場所

自宅で保管されたまま動かない現金、いわゆるタンス預金は、日本経済新聞の推計で2023年1月の約60兆円をピークに、2025年7月には約47兆円まで減りました。預金に利息が付くようになったことと、自宅に大金を置く防犯上のリスクが意識されたことが背景とみられています。

2026年10月時点では、100万円を1年預けると税引後で約4,000円〜1万1,000円台の利息が付く預金があります。手元の現金は当面の備えに絞り、残りは預金や個人向け国債に分けると、増えないお金と盗難のリスクを同時に減らせます。

タンス預金は推計で約60兆円規模、2025年7月は約47兆円

タンス預金は自宅にしまわれた現金なので、正確な額は誰にも分かりません。手がかりになるのは紙幣の発行残高で、日本銀行は取引に使われにくい1万円札の増え方などから現金の使われ方を分析しています。

日銀は2025年の分析で、紙幣発行残高の半分程度がタンス預金などの取引以外の目的で持たれている可能性を示しました。2024年度の発行残高は金額で約118兆円で、ここから約60兆円規模と試算されています(日銀自身は具体的な金額までは示していません)。

もともとタンス預金が膨らんだ理由として、預けても利息がほとんど付かない低金利が長く続いたことが挙げられます。マイナンバー制度の導入や2015年の相続税の基礎控除縮小を受け、資産を手元に置きたい心理が一部で働いたとの見方もありました。

本記事のもとになった第一生命経済研究所のレポート(2017年3月公表)も、当時のこうした増加傾向を取り上げたものです。

タンス預金が減った背景は利上げと防犯意識

流れを変えたのは金利です。日本銀行は2024年3月に大規模な金融緩和を転換し、その後段階的に利上げを続けてきました。2026年9月18日の金融政策決定会合では、政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げています(日本銀行 金融政策に関する決定事項等)。

市場の金利も上がっています。新発10年物国債の利回りは、2026年10月上旬に3.1%前後で推移しました(財務省 国債金利情報)。

預金金利もこの動きに沿って改定が続いています。主な例は次のとおりです(いずれも税引前)。

  • 三菱UFJ銀行のスーパー定期は、1年もの年0.500%(2026年8月3日改定)です。普通預金は年0.40%で、11月2日から年0.50%に上がります。
  • あおぞら銀行のBANK普通預金は、2026年10月1日から残高100万円までの部分が年1.20%、100万円超の部分が年0.75%です。円定期預金のBANK The 定期(50万円以上)は1年もの年1.4%、5年もの年1.7%です(10月1日現在)。
  • オリックス銀行の通販型定期預金(ダイレクト預金・100万円以上)は、1年もの年1.41%です(10月1日現在)。

預ければ利息が付く状況に戻ったうえ、強盗事件の報道で自宅保管のリスクが意識されたことも重なり、タンス預金は減る方向に動いたとみられます。利上げと預金金利の関係は日本銀行の役割と金融政策で詳しく扱っています。

100万円を1年置いた場合の差は最大で1万円余り

金利が戻ったといっても、金額にすると小さく感じるかもしれません。100万円を1年間置いた場合の税引後の利息を比べました。利息からは20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)が差し引かれます。

金利は税引前・2026年10月時点(三菱UFJの普通預金は11月2日から年0.50%)。利息から20.315%を差し引き、税は円未満切り捨てで計算。

タンス預金は1年置いても増えません。三菱UFJ銀行の普通預金(年0.40%)で約3,188円、1年定期(年0.500%)で約3,985円です。

あおぞら銀行のBANK普通預金(100万円までの部分が年1.20%)なら約9,563円、BANK The 定期の1年もの(年1.4%)なら約11,156円になります。

年に数千円から1万円余りの差です。盗難や火災のリスクを負ってまで、まとまった現金を自宅に置く理由にはなりにくい水準になりました。金額は1年ちょうどの単純計算で、税金は円未満を切り捨てています。

タンス預金のデメリットは利息・物価・補償の3点

自宅で現金を持つこと自体は本人の自由です。ただ、銀行に預けても増えない、手数料ばかりかかるという思い込みのままタンス預金を増やすと、次の点で損になりがちです。

  • 利息がいっさい付かない。普通預金でも定期預金でも、預けておけば利息が付きます。タンス預金は何年置いても増えません。
  • 物価が上がると実質的に目減りする。額面は変わらなくても、モノの値段が上がれば同じ金額で買えるものは減ります。
  • 盗難・火災・紛失は補償されない。銀行預金には、偽造・盗難キャッシュカードによる不正な引き出しを補償する制度があります。自宅の現金が盗まれても補償はありません。
  • 手数料は銀行によって違う。ネット銀行の多くは、ATMや振込の手数料を条件付きで月に一定回数まで無料にしています。今の銀行で手数料がかかっても、他行も同じとは限りません。

タンス預金と銀行預金の違い

比較の観点タンス預金(自宅保管)銀行預金
利息付かない(0円)普通預金・定期預金で利息が付く
盗難・破綻時の保護なし(自己責任)不正引き出しの補償制度あり/破綻時は預金保険で保護
引き出し・送金の手数料かからないが手元にある分だけネット銀行は一定回数無料のところが多い
災害時の対応持ち出せた分のみ本人確認による払い戻しの特例措置がとられることがある
物価上昇への耐性利息が付かず実質的に目減りしやすい利息の分だけ目減りを緩和できる

金利のある時代の預け先は使う時期で選ぶ

すぐに使わない余裕資金は、普通預金に置いたままより定期預金に移すほうが利息の差が広がります。キャンペーン金利を使う場合は、対象者・最低預入額・適用期間を確認してから預けます。

定期預金は満期前に解約すると中途解約利率が適用されます。あおぞら銀行のBANK The 定期の中途解約利率は年0.1%(2026年10月1日現在)で、1年もの年1.4%の10分の1以下です。

使う時期が読めないお金まで長期の定期に入れないのが基本です。預け先の比べ方は定期預金の選び方(金利・満期・解約の確認点)で整理しています。

銀行預金には預金保険制度(ペイオフ)があります。1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護され、利息の付かない決済用預金は全額保護です(預金保険機構「保護の範囲」)。

すでに預けている定期預金は、満期まで預入時の金利のままです。金利改定が反映されるのは、満期後の継続や新しい預け入れからになります。

元本割れしにくい置き場所としての個人向け国債

タンス預金から移す先として、定期預金と並んで検討しやすいのが個人向け国債です。国が発行し、1万円から買え、満期まで持てば額面の金額が戻ります。

財務省が2026年10月7日に公表した10月募集分(募集期間10月8日〜30日、発行日11月16日)の利率は次のとおりです。

タイプ適用利率(税引前)税引後特徴
変動10年(第199回債)年2.05%(初回の利子)年1.6335425%半年ごとに利率を見直す
固定5年(第187回債)年2.39%年1.9044715%満期まで利率が変わらない
固定3年(第197回債)年2.07%年1.6494795%満期まで利率が変わらない

いずれも銀行の1年もの定期預金より高い水準です。ただし発行から1年間は原則として中途換金できません。1年経過後の換金では、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。

保有者が亡くなった場合や、災害救助法の対象となった大規模な自然災害で被害を受けた場合は、1年以内でも換金できます。数か月以内に使う予定のお金には向かないため、預金と役割を分けて考えます。

新窓販国債は途中で売ると市場価格しだいで元本割れすることがあり、個人向け国債とは扱いが違います。条件は財務省 現在募集中の個人向け国債に掲載されています。

目的別に手元と預金を分ける

すべてを預金に移せばよいわけでもありません。用途で分けると整理しやすくなります。

  • 日常の生活費・緊急時の現金は、停電や通信障害でATMやキャッシュレス決済が使えない場面に備え、数万円程度を手元に置く考え方があります。
  • 数か月〜1年以内に使うお金は、普通預金や短期の定期預金に置きます。金利より、必要なときにすぐ引き出せることを優先します。
  • 当面使う予定のない余裕資金は、1年もの以上の定期預金や個人向け国債へ移します。預金は1金融機関1,000万円の保護枠を意識して分けます。

退職金のようにまとまった額を預けるときの注意点は退職金の定期預金(専用プランの金利と落とし穴)で取り上げています。

よくある質問

Q. タンス預金をしていること自体は違法ですか?

A. 自分のお金を自宅で保管すること自体は違法ではありません。相続や贈与で受け取ったお金を、申告せずに隠す目的で保管すると税務上の問題になります。

Q. 自宅の現金を銀行に戻すなら普通預金と定期預金のどちらに入れますか?

A. 数か月以内に使うお金は普通預金、1年以上使わないお金は定期預金が目安です。普通預金でも、100万円までの部分に年1.20%が付く例があります(あおぞら銀行BANK・2026年10月1日現在)。

Q. 災害や停電に備えて手元に置く現金はいくらくらいですか?

A. 決まった額はなく、ATMや決済が止まった数日をしのげる数万円程度が目安です。被災時は通帳や印鑑がなくても、本人確認のうえで預金の払い戻しに応じる特例措置がとられることがあります。

Q. 1,000万円を超える現金を預けるときはどう分ければ保護されますか?

A. 預金保険の保護は、1金融機関ごとに元本1,000万円と破綻日までの利息等までです。超える分を別の金融機関に預けると、それぞれで保護の対象になります。

Q. まとまった現金を一度に入金すると税金はかかりますか?

A. 入金そのものに税金はかかりません。相続や贈与で得たお金は入金の有無にかかわらず申告が必要で、出どころを示す通帳や契約書を残しておくと説明しやすくなります。

預金金利はまだ高い水準とまでは言えません。それでも、利息が付かず盗難・火災の補償もないタンス預金に大金を置く状態は、機会損失とリスクの両面で不利です。手元の現金は当面の備えに絞り、残りは複数の銀行や個人向け国債に分けて置きます。

金利・キャンペーン条件は記載時点のものです。預け入れ前に各行の最新の金利表でご確認ください。

参考:第一生命経済研究所の金融レポート(2017年3月公表)

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