定期預金のラダリングとは
定期預金のラダリングという用語をご存知でしょうか?
金融業界では満期日をずらした複数の金融商品を組み合わせてもつことを「ラダリング(Laddering)」と言います。語源は”はしご(ladder)”。はしごのように満期日が1段1段続いていくように金融商品を持つことを意味します。
円定期預金についても同じように満期日をずらした複数の定期預金を持つことで様々な効果を得られます。少しわかりにくいので、具体的な例でその効果を確認してみましょう。
たとえば、当分の間使う予定の無いお金が500万円あったので、預入期間5年の年0.5%の円定期預金に1口で預け入れたAさんと、1年もの(年0.1%)、2年もの(年0.2%)、3年もの(年0.3%)、4年もの(年0.4%)、5年もの(年0.5%)の定期預金5口に100万円ずつ預け入れたBさんとを比較してみましょう。いわゆる、「ラダリング」という手法を使っているのがBさんですね。
- 効果①・・・金利上昇に備える
何もなく5年間すぎた場合、単純計算で5年間で受け取った利息はAさん>Bさんですね。金利が高い5年ものの定期預金に全額を預け入れているのですから当然と言えば当然です。
ただし、ここで忘れてはいけないのは、Aさんはその5年間の間に「毎年、100万円の定期預金が満期を迎えている」ということです。5年間で受け取った利息が「Aさん>Bさん」と確実に言えるのは、「Bさんが、毎年迎えた満期で何もしなかった」という前提にたった場合だけですね。
極端な話をしますが、1年後に日本の金利が上昇した結果、銀行の預金金利が上昇し、年1.0%の定期預金が利用できるかもしれないわけです。もし、1年後、2年後、3年後に迎える満期の都度、年1.0%の定期預金に預けることができたとしたら、5年後に受け取る利息はAさん<Bさんと逆転してしまうことが理解いただけると思います。
- 効果②・・・急な出費に備える
理由はなんでもよいのですが、例えば、「子供が急に留学に行きたいと言い出した」とか「結婚することになったから少し援助してあげたい」、「ふと思い立って海外旅行に行きたくなった」などの理由で、まとまったお金が必要になったとします。
ここでは、手元にある流動性のある資金(普通預金など)以外に100万円のお金が必要になってしまったとします。Aさんは「500万円の定期預金を中途解約してお金を用立てる」ことになりますね。Bさんはどうでしょう?5口あるうちの1口を中途解約することでお金を用立てることができます。場合によっては、満期まで待つだけで済む可能性も十分ありますね。
ご存知の通り、定期預金は原則としては満期まで持つべきです。なぜなら、中途解約した場合、受け取れる利息が極端に減る(中途解約利率と呼ばれている中途解約のペナルティ分の利息が受け取れない)ためです。Aさんの場合、せっかくこれまで預け入れていた500万円を全て中途解約しなければならず、受け取れる利息が大幅に減ってしまいます。Bさんの場合、5口のうち1口を躊躇解約するだけで済みますので、中途解約の影響を受ける資金は1口/5口にすることができます。
当初持っていた500万円の資金はAさん、Bさんともに400万円に減ってしまっていますが、Bさんは400万円についてはしっかりと利息を受け取ることができることがわかります。
※これは「ラダリング(複数の満期日に分ける)」ではなく、定期預金の小口分別(500万円で1口ではなく、100万円×5口することにより得られる効果ですが、ラダリングという手法を使った場合、自然にこの効果も得られることになります。
定期預金のラダリングの理想は?
定期預金は原則として預け入れる期間が長ければ長いほど金利が高くなるのが一般的です。昨今のマイナス金利の影響で必ずしもそうではないのですが、原則としては預入期間の長い定期預金のほうがより高い金利が適用されます。
従って、預入期間の長い定期預金を組み合わせてラダリングすればよいことになります。一般的な銀行では、定期預金の預入期間は5年が最長です。実は先ほどのBさんの方法を更に発展させると理想的な姿に変わっていきます。
具体的に確認していきましょう。
1年後・・・1年ものの100万円の定期預金が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
2年後・・・2年ものの100万円の定期預金が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
3年後・・・3年ものの100万円の定期預金が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
4年後・・・4年ものの100万円の定期預金が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
5年後・・・5年ものの100万円の定期預金が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
6年後・・・1年後に預け入れた5年もの定期預金が満期 → 5年もの定期預金に預け入れ
以下、上記の繰り返し。
いかがでしょうか?最初は満期日を複数にわけるために、期間の短い定期預金(かつ低金利)を組み合わせて使わなければなりませんでしたが、5年経ってしまうと、5年ものの定期預金が毎年満期を迎えることになってしまうのがわかりますね。
これにより、より高い金利(であるはず)の5年もの定期預金だけで、きれいに「ラダリング」が完成することがわかります。5年もの定期預金を使って最終的に毎年満期がきて資金を小分けにするためには、資金を5口に分けて管理する、という方法がわかりやすい、ということです。
ラダリングは、一般的には耳慣れない言葉だと思いますが決して難しい話ではありません。より高度にお金を管理する方法もありますが、特に頭の片隅においてほしいことは、お金をいくつかに小分けして管理することは、どんな場面においても重要になってくる、です。大切なご資産を少しでも有効に活用いただければと思います。
この記事が皆様のお金の管理の参考になれば幸いです。