1年ものの定期預金で「金利0.1%上乗せ」と「ポイント1,000円分」のどちらを選ぶかは、預入額がおよそ125万円を超えるかどうかで決まります。125万円より少なければポイント、多ければ金利のほうが手取りは多くなります。
分かれ目が100万円ではなく125万円になるのは、利息からは20.315%の税金が必ず引かれる一方、現金やポイントの特典は多くの人にとって税金がかからないからです。この記事では、この「税の非対称」を織り込んで、金利型と特典型のキャンペーンを同じ物差しで比べる方法を示します。
目次
比べる前に「円・税引後・同じ期間」の3つにそろえる
金利は「年◯%」、ポイントは「◯円分」と、単位の違うもの同士を比べようとするから迷います。まず、両方をその期間に実際に受け取る円の額(税引後)に置き直します。そろえる軸は次の3つです。
- 期間:年利表示は1年あたりの率です。6か月ものなら受け取る利息は1年ものの約半分、3か月ものなら約4分の1になります。
- 税金:利息は受取時に20.315%が源泉徴収されます。特典の現金・ポイントは一時所得の扱いで、通常は税額ゼロです。
- ポイントの実質価値:期間限定・用途限定のポイントは、額面どおり1円として使い切れるとは限りません。
期間の置き直しは見落とされやすい点で、詳しくは年0.5%表示と受取利息の関係を整理した記事で計算例を示しています。ここからは残る2つ、税金とポイントの価値を順に見ていきます。
利息は必ず20.315%引かれ、特典は多くの場合税金ゼロ
国税庁は、預貯金の利子を「利子所得」とし、支払を受ける際に所得税・復興特別所得税15.315%と地方税5%が源泉徴収され、それで納税が完結する源泉分離課税だと説明しています(国税庁 No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得))。つまり、表示金利で計算した利息のうち手元に残るのは79.685%です。
なお、令和8年度税制改正で2027年分から防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税の税率が引き下げられますが、国税庁は両者の合計税率は改正の前後で変わらないとしています。預金利息の手取り計算は、当面この79.685%を使えば足ります。内訳は預金利息の税金20.315%の内訳と手取り早見表にまとめています。
一方、口座開設や取引条件の達成で銀行から受け取る現金特典は利息ではなく、一時所得にあたります。一時所得には年間最高50万円の特別控除があり、その年の一時所得の合計が50万円以下なら所得金額はゼロです(国税庁 No.1490 一時所得)。
ポイントも、抽選キャンペーンの当選などで臨時・偶発的に得たものや、共通ポイントの運営企業から付与されたものは、使った年の一時所得などとして計上するのが国税庁の整理です(国税庁 No.1907 企業発行ポイントの取扱い)。こちらも50万円の枠に収まる限り、税額は生じません。
ただし50万円の枠は銀行ごとではなく、生命保険の満期返戻金などほかの一時所得と合算して1回だけ使えます。特典の課税で迷いやすい例外は口座開設特典の現金・ポイントと一時所得の考え方で詳しく扱っています。また、懸賞金付き定期預金の懸賞金は例外で、利息と同じく20.315%の源泉分離課税です。
損益分岐の式:特典額 ÷(上乗せ金利 × 期間 × 0.79685)
上乗せ金利で増える税引後の利息は「預入額 × 上乗せ金利 × 期間(年) × 0.79685」です。これが特典の額と等しくなる預入額が分かれ目なので、式を入れ替えると次のようになります。
損益分岐の預入額 = 特典の円換算額 ÷(上乗せ金利 × 期間(年) × 0.79685)
特典1,000円分を例に、上乗せ幅と預入期間ごとの分岐点を計算すると次のとおりです。預入額がこの金額より多ければ金利型、少なければ特典型のほうが手取りは多くなります。
| 上乗せ金利(年率) | 3か月もの | 6か月もの | 1年もの |
|---|---|---|---|
| 0.1% | 約502万円 | 約251万円 | 約125万円 |
| 0.3% | 約167万円 | 約84万円 | 約42万円 |
| 0.5% | 約100万円 | 約50万円 | 約25万円 |
※特典1,000円分・税率20.315%・期間は月割りで概算(当サイト試算)。特典が5,000円なら分岐点は5倍、1万円なら10倍になります。
表から読み取れるのは、期間が短いほど、上乗せ幅が小さいほど、特典型が有利になる範囲が広がるということです。3か月もので0.1%の上乗せなら、500万円を預けてようやく1,000円分の特典と並びます。
ここでよくある誤りが、税引前の利息と特典をそのまま並べることです。100万円を1年、0.1%上乗せで預けると、表示金利どおりなら1,000円で「ポイント1,000円と同じ」に見えます。しかし実際に増える手取りは約797円で、200円ほど特典に届きません。税引前で比べると、利息を約25%多く見積もってしまうことになります。
ポイントは額面どおり「1円」とは限らない
特典がポイントの場合は、分岐点の式に入れる「円換算額」を自分で見積もる必要があります。見るべきは次の点です。
- 期間・用途の限定:有効期限が短い、使える店やサービスが限られるポイントは、使い切れない分が出やすくなります。
- 交換レート:銀行独自のポイントを共通ポイントや現金に換えるとき、1ポイント=1円で換えられるかは制度ごとに異なります。
- 付与の方式:「抽選で当たる」「総額を参加者で山分け」の場合、受け取れる額は応募状況しだいで、申込時点では確定しません。
たとえば1,000ポイントのうち実際に使い切れそうなのが7割だと感じるなら、円換算額は700円として式に入れます。抽選型は当選確率が公表されないことが多いため、比較の上では0円として扱い、当たればおまけと考えるのが堅実です。
反対に、現金で口座に入金される特典は額面どおり1円として数えられます。同じ金額なら、現金>使い道の広いポイント>期間・用途限定のポイント>抽選の順に、比較上の価値は下がると考えてください。
特典型に付いてくる「見えないコスト」も円で数える
特典型のキャンペーンは、定期預金の金利とは別の条件で成り立っていることが多く、その条件にもコストがあります。分岐点の計算とあわせて、次の3点を確認しておくと判断を誤りにくくなります。
1つ目は残高を維持する期間です。「判定日まで残高◯万円以上」のような条件は、その間お金を普通預金に置いておくことを意味します。定期預金に預けていれば得られた金利との差は、特典から差し引いて考えます。
2つ目は手間と切り替えの負担です。給与受取口座の変更や口座振替の登録は、会社への届出や他行口座の整理を伴います。一度きりの特典のために日常の口座を動かす価値があるかは、金額だけでは決まりません。
3つ目は受け取りまでの長さです。特典の入金は条件達成の数か月後になることが多く、その前に解約や残高割れがあると対象外になります。金利型の上乗せも、中途解約すれば適用されない点は同じです。
2026年9月時点の例:同じ銀行の金利型と現金型を円で並べる
考え方を実例に当てはめると、比べ方の感覚がつかめます。以下は2026年9月29日時点で公式サイトに掲載されている内容で、いずれも期間限定です。例が終了しても、上で示した計算の手順はそのまま使えます。
例1(金利型):ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)の商号変更記念のキャンペーンでは、2026年11月1日までに対象支店で預け入れた円定期預金6か月ものに年1.25%(税引後 年0.99%)が適用されます。預入額の上限はなく、キャンペーン金利は初回満期日までです。
同行が示す計算例では、100万円を6か月預けた場合の受取利息は税引前6,301円、税引後5,022円です。
例2(現金型):同じ時期に同行は、2026年10月31日までにエントリーし、10月1日から11月30日までに新規で1回15万円以上の給与受取をした個人に現金5,000円を提供するキャンペーンも行っています(特典の提供は2026年12月下旬予定)。
円にそろえると、100万円を半年預けた税引後の利息と、給与受取の現金特典がほぼ同じ額になります。ただし求められるものはまったく違い、例1は100万円を半年動かさないこと、例2は給与の受取口座を切り替えることが条件です。どちらが自分にとって軽い負担かで選ぶのが、同じ物差しで比べたあとの判断になります。
このほかの金利キャンペーンを探すときは、定期預金キャンペーンの比較ページで各行の条件を確認し、候補ごとにこの記事の式へ当てはめてみてください。
自分の預入額で判断する3つの手順
- 上乗せ分を税引後の円にする:預入額 × 上乗せ金利 × 期間(年) × 0.79685。上乗せ幅が分からなければ、同じ銀行の同じ期間の店頭金利との差を使います。
- 特典を実質の円にする:現金は額面どおり、ポイントは使い切れる割合を掛け、抽選は0円とします。残高維持で普通預金に置く期間があれば、その間の金利差を差し引きます。
- 差額と手間を天秤にかける:数百円の差なら、手続きの少ないほう・資金を早く自由にできるほうを選んで問題ありません。数千円以上の差があるときだけ、手間をかける価値があります。
目安として、預入額が数十万円なら特典型、数百万円以上をまとめて預けるなら金利型が有利になりやすい構図です。ただし分岐点は上乗せ幅と期間で大きく動くため、必ず手元の数字で計算してください。
金利とポイントの比較で迷いやすい点
Q. 金利型とポイント型の特典を同じ年に両方受け取ると、税金は増えますか?
A. 利息は源泉徴収で課税が終わるため、特典と合算されることはありません。特典の現金・ポイントは一時所得として年間50万円の特別控除の枠内で扱われ、ほかの一時所得と合わせて50万円以下なら税額はゼロです。
Q. 預入額が損益分岐の近くなら、どちらを選べばよいですか?
A. 手取りの差がほぼ無いので、条件の軽さで選ぶのが合理的です。途中で引き出す可能性があるなら、中途解約で上乗せが消える金利型より、残高条件の短い特典型のほうが結果が安定します。
Q. 普通預金の金利が上がっているのに、特典型でも損はしませんか?
A. 特典型の多くは普通預金に残高を置く条件なので、普通預金金利が上がるほど「定期に預けなかった機会損失」は小さくなります。定期と普通預金の金利差が小さい銀行ほど、特典型を選ぶ不利は小さいと考えられます。
Q. 口座開設でもらったポイントは、いつの年の所得になりますか?
A. 国税庁は、臨時・偶発的に得たポイントや共通ポイントの運営企業から付与されたポイントを、使った日の属する年の一時所得などに計上するとしています。現金特典は受け取った年です。どちらも50万円の特別控除の範囲なら税額は生じません。
少額なら特典、まとまった額なら金利——境目は自分で出せる
金利0.1%とポイント1,000円のように単位の違う特典は、期間・税金・ポイントの実質価値をそろえて円にすれば、どちらが得かを自分で判定できます。1年ものの0.1%上乗せなら分岐点は約125万円で、期間が短いほど特典型が有利な範囲は広がります。
キャンペーンの金利や特典の内容は、募集額の到達や金融情勢によって期間中でも変わることがあります。最新の金利・条件は各行の公式サイトでご確認ください。
参考・出典:国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)」/国税庁「No.1490 一時所得」/国税庁「No.1907 個人が企業発行ポイントを取得又は使用した場合の取扱い」(いずれも2026年9月29日確認)