銀行が破綻しても、定期預金は元本1,000万円までと破綻日までの利息が守られます。守られる利息は預け入れたときの約定利率で計算されますが、破綻日の翌日から満期までの分は保護の範囲に入りません。
5年定期の2年目で破綻した場合、残り3年分の約定利息は約束どおりには受け取れない可能性があります。預金者に残るのは、引き継ぎ先で利率の下がった定期を続けるか、破綻日までの利息で解約するかの選択です。
保護される利息は破綻日で止まり、満期までの約定利息は対象外
預金保険で守られる定期預金の利息は、満期まで預けた場合の約定利率を使い、預入日から破綻日までの日数で日割りした金額です(預金保険機構「預金保険制度の基礎知識」)。
途中解約の扱いにはならないため、中途解約利率まで下がることはありません。破綻日までの利息は、約定どおりの利率で数えられます。
一方で、破綻日より後の期間の利息は預金保険が約束するものではありません。高い金利で長く固定したつもりの定期ほど、破綻したときに失う残り期間の利息が大きくなります。
保護の範囲そのもの(名寄せや1,000万円を超えたときの優先順位)は預金保険制度(ペイオフ)の1,000万円の保護と分散の考え方で扱っています。この記事は、破綻のあと手元の定期預金に何が起きるかに絞ります。
破綻の翌営業日から、定期預金は元の契約のまま払い戻せる
破綻処理は、健全な銀行に預金を引き継ぐ資金援助方式が優先されます。金曜日に破綻した場合は週末に名寄せなどを進め、翌週月曜日から利息を含めて払い戻せるよう準備するとされています(預金保険機構「万が一金融機関が破綻した時」)。
唯一ペイオフが発動された日本振興銀行は、2010年9月10日(金)に破綻し、9月13日(月)午前9時に営業を再開しました。
再開後も、既存の定期は事業譲渡の前日までは元の約款どおりに扱われました(預金保険機構「日本振興銀行の経営破綻と今後の業務等について」)。
満期が来れば約定利率の利息が付き、途中で解約すれば中途解約利率が使われます。破綻の翌日以降に新しく預ける分には、主要行を参考に引き下げた店頭表示金利が適用されました。
引き継ぎ先へ移る前に、承諾するか解約するかを選ぶ
預金が引き継ぎ先の銀行へ移るとき、利率は見直されるのが通例です。日本振興銀行の例では、付保預金は2011年4月25日に第二日本承継銀行へ移され、移った日から預金金利が引き下げられました。
そのため満期が事業譲渡日以降に来る預金者には、2011年1月に回答書が送られました。引き継ぎを承諾するかどうかを、4月8日までに返送する形です(預金保険機構「第二日本承継銀行による日本振興銀行の預金の引継ぎについて」)。
| 選んだ道 | 受け取る利息の計算 | 預金のその後 |
|---|---|---|
| 引き継ぎを承諾して満期まで置く | 事業譲渡日の前日までは約定利率、譲渡日以降は引き継ぎ先が定める利率 | 引き継ぎ先の定期預金になる |
| 承諾して途中で解約する | 原則として引き継ぎ先が定める中途解約利率 | 解約した時点で払い戻し |
| 承諾せずに解約する(特例中途解約) | 約定利率を破綻日まで適用(元の中途解約利率は使わない) | 解約して払い戻し |
| 事業譲渡の前に自分で中途解約する | 破綻した銀行の中途解約利率 | 解約した時点で払い戻し |
承諾しない場合の利息は破綻日で止まり、破綻日から事業譲渡日までの数か月分は付きません。どちらが有利かは、引き継ぎ先の新しい利率と、ほかの銀行で預け直したときの利率で決まります。
500万円・5年定期の例で、4つの道の利息を比べる
仮定の数字で比べます。元本500万円を年1.500%の5年定期に預け、2年0か月で銀行が破綻し、その半年後に引き継ぎが行われたとします。引き継ぎ後の利率は年0.300%と置きました。
| ケース(仮定) | 利息(税引前) | 税引後の概算 |
|---|---|---|
| 破綻がなく5年満期まで置いた場合 | 375,000円 | 約298,800円 |
| 引き継ぎを承諾して満期まで置く(2年6か月は年1.500%、残り2年6か月は年0.300%) | 225,000円 | 約179,200円 |
| 承諾せず特例中途解約(破綻日までの2年分) | 150,000円 | 約119,500円 |
| 破綻直後に自分で中途解約(中途解約利率を約定利率の100分の1とした場合) | 1,500円 | 約1,100円 |
単利・年単位で計算し、税は20.315%の源泉分離課税で概算しました。中間利払いや自動継続の複利は省いています。
承諾した場合と承諾しない場合の差は、税引前で75,000円です。承諾しないなら残り2年6か月をほかで預け直せるので、500万円を年0.600%以上で置ければ差は埋まります。
つまり判断の目安は、引き継ぎ先の新しい利率と、同じ期間でほかの銀行が出している利率の比較です。引き継ぎ先の利率が市場の水準より低ければ、承諾せずに解約して預け直すほうが受け取りは増えます。
破綻を知ってすぐの中途解約は、保護される利息より少なくなる
破綻の報道を見て、まず定期預金を解約しようとする人は少なくありません。ところが期限前の解約には預金約款の中途解約利率が使われ、利息が少なくなる場合があると預金保険機構は説明しています。
日本振興銀行の約款では、2009年12月1日以降の預け入れ分は約定利率の100分の1まで下がる規定でした。慌てて解約した預金者は、待っていれば約定利率で受け取れた利息を手放したことになります。
1,000万円以内の定期預金は、破綻後に急いで解約しても受け取りは増えません。保護される部分は早い者勝ちにならないと、預金保険機構も明記しています。中途解約利率の決まり方は定期預金の中途解約利率の3つの型と計算例にまとめています。
1,000万円を超えた部分は、概算払で先に受け取るか弁済を待つ
元本1,000万円を超える部分とその利息は、破綻した銀行の財産の状況に応じて支払われます。支払いまでに時間がかかるため、預金保険機構が一定の率で預金を買い取る概算払という制度があります。
日本振興銀行では概算払率が25%とされ、買い取りは2010年12月13日から2011年3月31日まで受け付けました。
その後の再生計画の弁済率は、第1回39%、中間19%、最終2.95686%でした(預金保険機構「日本振興銀行の破綻処理」・同「日本振興清算株式会社の中間弁済について」・同「第3回弁済金支払(最終回)について」)。
3回の弁済率を足すと約61%です。概算払を受けた人にも、弁済が概算払額を上回った分は精算払として追加で支払われました。最終の支払いは2016年で、破綻から6年かかっています。
破綻した銀行から借入れがある人は、預金と借入金を相殺できます。相殺は預金者が申し出ないと行われず、概算払を受けた預金は相殺できなくなるため、順番は相殺が先です。
保険金支払方式になった場合は、期間内の請求が必要
引き継ぎ先が見つからず、預金保険機構が直接払う保険金支払方式になることもあります。この場合は支払期間・場所・方法が官報などで公告され、機構から支払通知と請求書が郵送されます。
預金者は支払期間内に自分で請求しなければなりません。期間内に請求しないと、災害などやむを得ない事情がある場合を除き保険金を受け取れません(預金保険機構「保険金支払方式による保護」)。
名寄せと支払通知は、銀行が機構に出す預金者データをもとに進みます。転居や結婚で住所・氏名が変わったまま届け出ていないと、名寄せに時間がかかり通知も届きにくくなります。
破綻に備えて、定期預金の側で決めておくこと
破綻した後の選択肢は限られるので、備えは預け入れの時点で決まります。とくに長期の定期は、満期までの金利を受け取れるかどうかが銀行の存続にかかっています。
- 1つの銀行の元本合計(普通預金を含む)を1,000万円以内にする。元利継続の定期は継続のたびに元本が増える
- 5年・10年の高金利定期を1行に集めず、満期をずらして複数行に分ける
- 長期で預ける銀行ほど、自己資本比率や開示資料で経営の状態を確認する
- 銀行に届け出た住所・氏名を最新にしておく
保護の範囲内でも、高い約定利率は破綻日までしか守られません。長く高い金利で預けるほど、預け先の健全性が受取利息に直接響きます。確認の手順は銀行の安全性を自己資本比率・格付けで確かめる方法で紹介しています。
定期預金の破綻リスクは、残り期間の金利の問題
銀行が破綻しても、1,000万円以内の定期預金の元本と破綻日までの約定利息は失われません。失う可能性があるのは、破綻日から満期までの約定利息です。
破綻後は慌てて中途解約せず、引き継ぎ先の利率とほかの銀行の利率を比べて、承諾するか解約するかを決めます。金利・キャンペーン条件は記載時点のものです。預け入れ前に各行の最新の金利表でご確認ください。