定期預金の実質金利は、税引後の金利から物価上昇率を引いた値です。2026年11月5日現在、大手3行の1年ものの金利は年0.700%(税引前)で、税引後では年0.558%です。
税引後の年0.558%から2026年9月の消費者物価指数の上昇率(総合・前年同月比2.1%)を引くと、実質金利は約マイナス1.5%になります。
auじぶん銀行の5年もの(年1.800%)でも、実質金利は約マイナス0.7%です。物価が年2.0%上がる場合、追いつくのに必要な金利は税引前で年2.510%です。
実質金利は、税引後の金利から物価上昇率を引いて求める
実質金利とは、預けたお金で買える物の量がどれだけ増えるかを示す金利のことです。銀行が表示している金利(名目金利)から、物価の上昇率を差し引いて求めます。
預金の利息からは、20.315%(所得税と復興特別所得税15.315%・住民税5%)の税金が源泉徴収されます(国税庁 No.1310)。手元に残る利息で比べるため、計算には税引後の金利を使います。
式にすると、実質金利≒名目金利×0.79685−物価上昇率です。正確には(1+税引後の金利)÷(1+物価上昇率)−1で求めますが、いまの金利と物価の範囲なら、2つの式の差は0.05ポイント未満です。
税引前の金利で計算すると、目減りを小さく見積もる
税引前の金利から物価上昇率を引くと、実際には受け取れない税金の分まで利息に数えることになります。年0.700%の1年ものなら、税引前の金利で計算するとマイナス1.40%、税引後ではマイナス1.54%です。
この差は金利が高いほど広がります。年1.800%の5年ものでは、税引前で計算すると目減りを0.37ポイント小さく見てしまいます。
2026年11月5日時点の4行の金利では、どの定期預金も実質金利がマイナスになる
対象は大手3行(三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行)とauじぶん銀行の4行です。公式金利表にある1年・3年・5年ものの金利(300万円未満・税引前)で実質金利を計算すると、下の表のようになります。
金利は、2026年11月5日時点で各行の金利表に載っている値です。大手3行の金利は、どの期間も3行で同じです。
| 銀行・期間 | 税引前 | 税引後 | 実質金利(物価2.1%) | 実質金利(物価2.4%) |
|---|---|---|---|---|
| 大手3行・1年 | 年0.700% | 年0.558% | −1.54% | −1.84% |
| 大手3行・3年 | 年0.900% | 年0.717% | −1.38% | −1.68% |
| 大手3行・5年 | 年1.100% | 年0.877% | −1.22% | −1.52% |
| auじぶん銀行・1年 | 年0.630% | 年0.502% | −1.60% | −1.90% |
| auじぶん銀行・3年 | 年1.000% | 年0.797% | −1.30% | −1.60% |
| auじぶん銀行・5年 | 年1.800% | 年1.434% | −0.67% | −0.97% |
※当サイト試算。金利の基準日は、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・auじぶん銀行が11月5日、みずほ銀行が11月2日(11月5日に見た金利表の表示)。税引後は税引前×0.79685で、小数第3位まで表示。物価上昇率は総務省の消費者物価指数(全国・2026年9月分)の総合2.1%と、生鮮食品及びエネルギーを除く総合2.4%。
auじぶん銀行の5年ものの金利は大手3行より0.7ポイント高く、実質金利でも約0.56ポイント上回ります。一方、1年ものの金利は大手3行より0.07ポイント低くなっています。ネット銀行の金利が、どの期間でも高いとは限りません。
9月の物価上昇率2.1%は、ガソリンの暫定税率の廃止などで低めに出ている
消費者物価指数は、総務省が毎月公表している物価の統計です。2026年9月分の全国の指数(10月23日公表)は、総合と生鮮食品を除く総合がともに前年同月比2.1%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が2.4%の上昇でした(総務省統計局)。
総務省の試算では、ガソリンの暫定税率の廃止など、エネルギーに関わる政策の効果が、9月の総合の上昇率を0.82ポイント押し下げています。
生鮮食品とエネルギーを除いた2.4%で計算すると、大手3行の1年ものの実質金利は約マイナス1.8%です。どちらの上昇率を使うかで、実質金利は0.3ポイント変わります。
前年同月比は、過去1年間に物価がどれだけ上がったかを表す数字です。これから預けるお金の実質金利は、預けた日から満期までの物価の動きで決まります。
これから預けるお金の実質金利は、日本銀行の物価見通しを当てはめて試算できる
日本銀行は「経済・物価情勢の展望」(2026年10月30日)で、生鮮食品を除く消費者物価の前年度比の見通しを示しています。見通しの中央値は、2026年度2.5%、2027年度2.6%、2028年度2.0%です(日本銀行)。
日本銀行は同じ資料で、物価が見通しより高くなるおそれのほうが大きいとみています。政策金利は9月に1.25%程度へ引き上げられ、10月30日の会合では据え置かれました。
物価上昇率を1.5%・2.0%・2.5%と仮定すると、金利の異なる3つの定期預金の実質金利は、次の表のようになります。
| 税引前の金利 | 税引後 | 物価1.5% | 物価2.0% | 物価2.5% |
|---|---|---|---|---|
| 年0.700%(大手3行・1年) | 年0.558% | −0.94% | −1.44% | −1.94% |
| 年1.100%(大手3行・5年) | 年0.877% | −0.62% | −1.12% | −1.62% |
| 年1.800%(auじぶん銀行・5年) | 年1.434% | −0.07% | −0.57% | −1.07% |
※当サイト試算。物価上昇率は仮定の値で、将来の物価や金利を予測するものではありません。
物価の伸びが1.5%まで下がれば、年1.800%の5年ものの実質金利はほぼゼロになります。日本銀行の見通しのように2%台が続く間は、表のどの定期預金も実質金利はマイナスです。
物価2%に追いつくには、税引前で年2.510%の金利が必要
実質金利をゼロにする税引前の金利は、物価上昇率を0.79685で割ると求められます。物価が年2.0%なら年2.510%、年2.5%なら年3.137%です。
2026年11月5日現在、4行の金利表にある定期預金の金利は、どの期間も年2.510%に届いていません。預ける前に、定期預金の金利が「物価上昇率÷0.79685」で求めた値を上回っているかを確かめると、実質金利がプラスになるかどうかがすぐに分かります。
100万円を5年置くと、物価に追いつかない金額は現金と定期預金で4万〜7万円違う
物価が毎年2.0%上がると、いま100万円で買える物の値段は、5年後に約110万4,000円になります。100万円を現金で持った場合と、2つの5年ものに預けた場合を比べると、次のようになります。
| お金の持ち方 | 5年後の手取り | 同じ物の5年後の値段 | 不足額 |
|---|---|---|---|
| 現金(利息なし) | 1,000,000円 | 1,104,081円 | 約10万4,000円 |
| 大手3行の5年もの(年1.100%) | 1,043,827円 | 1,104,081円 | 約6万円 |
| auじぶん銀行の5年もの(年1.800%) | 1,071,717円 | 1,104,081円 | 約3万2,000円 |
※当サイト試算。利息は5年分を単利で計算し、20.315%の税を引いた額。半年複利や中間払いがある商品では受取額が変わります。物価は毎年2.0%上がると仮定。
定期預金でも目減りはしますが、現金で持つより不足額は4万〜7万円少なくなります。実質金利がマイナスであることは、預金をやめて現金で持つ理由にはなりません。
実質金利がマイナスでも、元本と利息が守られる点は変わらない
定期預金は、預けた金額が減りません。銀行が破綻しても、1金融機関あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が預金保険で守られます(預金保険機構)。実質金利のマイナスは、この安全性と引き換えに受け入れている目減りです。
1〜3年以内に使う予定のお金を値動きのある商品に移すと、使うときに元本を割っているおそれがあります。こうしたお金は定期預金で持ち、金利の高い預け先と期間を選ぶことで、目減りを小さくできます。
消費者物価指数が発表されたら、自分の定期預金の実質金利を計算し直す
定期預金の金利は預けた日から満期まで変わりませんが、物価の上昇率は毎月変わります。総務省が消費者物価指数を公表したら、自分の定期預金の税引後の金利から上昇率を引いて、実質金利がどう動いたかを確かめてください。
預金金利が上がったときは、満期まで長く残っている定期預金を預け替えたほうが得になる場合があります。中途解約すると利率が下がるため、残りの期間と金利差で損得を比べてください。計算例は金利上昇時の預け替えの損益分岐の記事で紹介しています。
利息にかかる税の割合は、預金利息の税金20.315%の内訳と手取り早見表で解説しています。100年という長い期間で物価と預金を比べた例は100年定期預金とインフレの記事で読めます。
金利と物価の数値は記載時点のものです。預け入れ前に各行の最新の金利表でご確認ください。