口座開設や給与振込の指定で「現金◯円プレゼント」「◯ポイント進呈」という特典を受け取る機会が増えています。キャンペーン要項の末尾には決まって「本特典は課税対象となる場合があります」と書かれていますが、実際にいくらから税金がかかり、確定申告が必要になるのかまで説明している銀行はほとんどありません。結論から言うと、現金やポイントの特典は預金利息とは別の「一時所得」として扱われ、年間の合計が50万円以下なら所得税はかかりません。ただし「所得税の申告が不要=何もしなくてよい」ではない場面が一つだけあります。国税庁の公式見解(タックスアンサー)に沿って、預金者が押さえておくべき範囲に絞って整理します。
目次
同じ銀行から受け取っても、利息と特典では税の「入口」が違う
定期預金の利息は「利子所得」で、受け取る時点で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が源泉徴収され、それで課税が完結します(詳しくは預金利息の税金20.315%の内訳をご覧ください)。一方、口座開設や取引条件の達成を理由に銀行が支払う現金特典は、利息ではありません。国税庁は一時所得の代表例として「法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます)」を挙げており、銀行という法人から受け取るキャンペーンの現金は、この類型に当たります。
「法人からもらったお金なら贈与税では?」と思われるかもしれませんが、贈与税は個人から財産をもらったときの税金です。国税庁のタックスアンサーNo.4405は「法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく所得税がかかります」と明記しています。つまり、銀行の特典に贈与税の出番はなく、所得税(と住民税)の世界で一時所得として扱われるということです。
| 受け取るもの | 所得の区分 | 税の取られ方 | 確定申告 |
|---|---|---|---|
| 定期預金・普通預金の利息 | 利子所得 | 受取時に20.315%を源泉徴収(源泉分離課税) | できない(源泉徴収で完結) |
| 口座開設・給与振込指定などの現金特典 | 一時所得 | 受取時に税金は引かれない。年間合計から特別控除50万円を引いた残りの2分の1が課税対象 | 一時所得の合計が年50万円以下なら不要(下記) |
| 抽選キャンペーン等で付与されたポイント | 一時所得(使った年に計上) | 同上 | 同上 |
| 買い物の決済額に応じて付くポイント | 値引きと同じ扱い(課税対象外) | — | 不要 |
| 懸賞金付き定期預金の懸賞金 | 一時所得だが源泉分離課税の対象 | 受取時に20.315%を源泉徴収 | できない(源泉徴収で完結) |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.1490「一時所得」、No.1907「個人が企業発行ポイントを取得又は使用した場合の取扱い」、No.4405「贈与税がかからない場合」(2026年9月3日確認)。
年間50万円の特別控除があるため、預金者の多くは税額ゼロで終わる
一時所得の金額は、次の式で計算します(国税庁 No.1490)。
総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
さらに、税額を計算するときはこの一時所得の金額の2分の1だけを給与など他の所得と合算します。銀行の特典には「収入を得るために支出した金額」がほぼありませんから、実務上は「1年間に受け取った特典の合計 − 50万円」がプラスになるかどうかが分かれ目です。
たとえば、2026年に2つの銀行で口座を開設し、A行の特典16,000円とB行の特典30,000円を受け取ったとします。合計46,000円から50万円を引くとマイナスですから、一時所得の金額は0円。所得税も住民税もかからず、申告も不要です。銀行の特典だけで年間50万円を超えることは現実的にほぼ起きないため、「課税対象となる場合があります」という注記は、ほとんどの預金者にとって実際には税額ゼロの注記だと理解して差し支えありません。
注意したいのは、50万円の特別控除は銀行ごとではなく、その年の一時所得すべてを合算して1回だけ使えるという点です。国税庁が一時所得の例として挙げるのは、懸賞や福引の賞金品、生命保険の一時金や満期返戻金、法人からの贈与、ふるさと納税の返礼品などで、これらはすべて同じ枠で合算されます。特典だけを見れば少額でも、同じ年に生命保険の満期金を受け取っていれば話が変わるということです。
ポイントは「なぜ付いたか」で扱いが変わる
現金ではなくポイントで付与される特典も増えています。国税庁のNo.1907は、ポイントを2種類に分けて説明しています。
1つ目は、買い物の決済代金に応じてその企業から付与されるポイントです。これは「通常の商取引における値引き」と同様の行為とみなされ、取得しても使っても課税対象となる経済的利益には当たりません。確定申告も不要です。
2つ目は、ポイント付与の抽選キャンペーンに当選するなど臨時・偶発的に取得したポイントや、共通ポイント制度を運営する企業から付与されたポイントです。こちらは値引きとは考えられないため、使った日の属する年の一時所得などとして総収入金額に算入します。付与された年ではなく「使った年」に数える点が現金特典と異なります。
口座開設の条件を満たした対価として銀行やグループ企業から付与されるポイントは、買い物の決済額に応じて付くものではありませんから、国税庁の整理に当てはめると2つ目の類型に近いと考えられます。とはいえ、現金特典と同じく50万円の特別控除の枠内に収まる限り税額は生じません。判断に迷う場合は、付与元の要項と所轄の税務署でご確認ください。
給与所得者の「20万円ルール」——一時所得なら目安は年90万円、ただし住民税は別
会社員など給与所得者は、給与以外の所得金額の合計が年間20万円以下であれば所得税の確定申告は不要とされています(国税庁 No.1900)。一時所得の場合は、50万円を引いた残りの2分の1が「所得金額」になるため、国税庁自身が「他の一時所得とされる所得との合計額が90万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません」と案内しています(No.1490 Q&A)。90万円 − 50万円 = 40万円、その2分の1 = 20万円、という計算です。
ここで見落とされがちな点が一つあります。「20万円以下なら申告不要」というのは所得税のルールであって、住民税には同じ省略ルールがありません。名古屋市は公式サイトで「市民税・県民税には、所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があります」と説明しており、東京都小平市も「所得の多少にかかわらず申告していただく必要があります」としています。
ただし、これは一時所得の「金額」がプラスになった人の話です。特典の合計が50万円以下であれば、住民税の計算上も一時所得の金額は0円で、申告すべき所得そのものがありません。整理すると次のようになります。
| その年の一時所得の合計 | 一時所得の金額 | 所得税の確定申告(給与所得者・他に申告事由がない場合) | 住民税の申告 |
|---|---|---|---|
| 50万円以下 | 0円 | 不要 | 申告する所得がない |
| 50万円超〜90万円以下 | 1〜40万円(課税対象はその2分の1) | 不要(20万円以下のため) | 市区町村への申告が必要になる(確定申告をしない場合) |
| 90万円超 | 40万円超 | 必要 | 確定申告をすれば別途の申告は不要 |
医療費控除や住宅ローン控除の適用などで確定申告をする人は、金額にかかわらず一時所得も含めて申告します。住民税の申告の要否は、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
見落としやすい3つの例外
懸賞金付き定期預金の懸賞金は、申告ではなく源泉徴収で完結する
地方銀行などが扱う「懸賞金付き定期預金」で当たる懸賞金は、一時所得に分類されますが、国税庁 No.1490が「懸賞金付預貯金等の懸賞金等については、20.315パーセントの税率による源泉分離課税が適用されますので、確定申告を行うことはできません」と明記しています。利息と同じように受取時に税金が引かれて終わり、50万円の特別控除の計算には入ってきません。同じ「銀行からもらう現金」でも、キャンペーン特典とは扱いが異なる点にご注意ください。
継続的な紹介報酬は一時所得にならないことがある
一時所得の定義には「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外」「労務や役務の対価としての性質を有しない」という条件が付いています。家族や友人を1〜2人紹介して受け取る紹介特典は臨時・偶発的な収入ですが、紹介活動を反復して報酬を得ているような場合は、雑所得など別の区分で判断される可能性があります。そうなると50万円の特別控除や2分の1の計算は使えません。紹介を「副業」として行っている場合は税務署にご相談ください。
金利上乗せ「相当額」を現金で受け取る特典もある
近年は、普通預金の金利を上乗せする代わりに、上乗せ分に相当する金額を後日「現金特典」として口座に入金する形式のキャンペーンも見られます。利息として支払われれば利子所得として源泉徴収されますが、キャンペーンの現金特典として入金されるものは、要項上は利息ではありません。金額が小さいうちは実害がありませんが、特典の「提供方法」が利息なのか現金特典なのかは、要項の該当欄で確認しておくと、年間の合計を把握するときに迷いません。
2026年9月時点の実例で当てはめてみる
考え方は上記で完結していますが、実際のキャンペーンに当てはめると感覚がつかめます。以下は2026年9月3日時点で各行公式サイトに掲載されている内容で、条件・金額・期間は予告なく変更されます。申し込みの際は必ず各行公式サイトで最新の要項をご確認ください。
例1:SBI新生銀行「ウェルカムプログラム」——現金で最大16,000円
2026年8月1日以降に新規口座開設した人向けの新規口座開設特典で、スタートアップ円定期預金の設定で1,000円、口座振替の登録と引き落としで最大2,000円、給与振込入金で3,000円、円から米ドル定期預金の設定で最大10,000円の計最大16,000円が、口座開設月を含む6か月目の末日までに円普通預金口座へ入金されます(要エントリー・マル優口座は対象外)。要項には「本特典は課税対象となる場合があります」と記載されています。全条件を達成しても16,000円ですから、単独で50万円に達することはなく、一時所得の金額は0円です。なお、同時に預け入れるスタートアップ円定期預金の利息のほうは、通常どおり20.315%が源泉徴収されます。特典と利息で税の扱いが分かれる典型例です。
例2:auじぶん銀行「はじめての口座開設&ご入金キャンペーン」——残高に応じて現金最大30,000円
2026年8月3日から9月30日までに新規口座を申し込み、10月31日までにエントリーのうえ同日時点の円普通預金残高が10万円以上の人に、残高に応じて最大15,000円(au・UQ mobileユーザーは最大30,000円)を2026年11月下旬に現金で入金するキャンペーンです。同行はこれと並行して「デビュー応援普通預金」も実施しており、こちらは円普通預金金利が最長1年間、年1.00%(税引前)相当となるよう、通常金利や各種金利優遇との差分相当額を現金特典として付与する仕組みと公表されています。前節の「金利上乗せ相当額を現金で受け取る」形式に当たり、口座開設の現金特典と合わせて年間の一時所得として把握しておくのが安全です。
いずれの例でも、特典の受け取りには新規資金・エントリー・給与振込の電文種目などの条件がついています。条件の読み方はキャンペーン金利の適用条件チェックリストで整理していますので、あわせてご確認ください。
判断材料:特典を受け取る前後で確認したい4点
税務上の実害が出るのは例外的なケースに限られますが、次の4点を押さえておけば、後から慌てることはありません。
- その年の一時所得を「銀行の特典以外」も含めて合算する——生命保険の満期金・解約返戻金、懸賞の当選金、ふるさと納税の返礼品なども同じ50万円の枠です。特典だけを見て安心しないでください。
- ポイント特典は「付与された年」ではなく「使った年」に数える——抽選やキャンペーンで得たポイントを翌年に使えば、翌年の一時所得になります。
- 合計が50万円を超えたら、所得税の申告が不要でも住民税の申告を検討する——90万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税には省略ルールがありません。お住まいの市区町村にご確認ください。
- 特典の入金明細は年末まで残しておく——一時所得は源泉徴収されず満額が入金されるため、銀行から税額の通知が来ることはありません。金額の把握は預金者自身の作業です。
税引後の受取額で比べるというこのサイトの物差しで言えば、現金特典は多くの人にとって「税引き前=税引き後」の収入です。同じ金額を利息で受け取れば必ず20.315%が引かれますから、キャンペーンの特典を金利換算して比べるときは、この非対称も頭に入れておくと判断がぶれません。金利表示の読み方そのものは定期預金キャンペーンの見極め方で解説しています。
特典の税金についてよくある疑問
複数の銀行から特典を受け取った場合、50万円の枠は銀行ごとに使えますか?
使えません。特別控除の50万円は、その年に受け取った一時所得すべてを合算したうえで1回だけ差し引きます。3つの銀行から各20万円ずつ受け取れば合計60万円となり、50万円を超えた10万円の2分の1である5万円が課税対象の所得になります。
特典の入金時に税金は引かれていますか?
キャンペーンの現金特典は利息と違い、原則として税金が差し引かれずに満額が入金されます。銀行が代わりに納税しているわけではないため、年間の合計額が50万円を超えるかどうかは自分で把握する必要があります。例外は懸賞金付き定期預金の懸賞金で、こちらは受取時に20.315%が源泉徴収されます。
特典を受け取った口座をその後解約しても、税務上の問題はありますか?
税務上の扱いは変わりません。受け取った年の一時所得として数えるだけです。ただし、多くのキャンペーンは特典の入金前に口座を解約すると対象外になる条件を設けているため、解約のタイミングは要項の「特典提供時期」を確認してから決めてください。
家族が口座を開設して受け取った特典も、自分の一時所得に合算しますか?
一時所得は受け取った本人ごとに計算します。配偶者や子どもが自分名義の口座で受け取った特典は、その本人の一時所得であり、世帯で合算するものではありません。なお、家族名義の口座に実質的に自分の資金を入れて特典を受け取るような使い方は、税務以前にキャンペーン要項や口座の名義ルールに反するおそれがありますので避けてください。
まとめ——「課税対象となる場合があります」の実像
銀行の口座開設・取引条件達成で受け取る現金やポイントの特典は、利子所得ではなく一時所得です。年間50万円の特別控除があるため、銀行の特典だけで税額が生じることはまずありませんが、生命保険の満期金など他の一時所得と同じ枠で合算される点、ポイントは使った年に数える点、そして合計が50万円を超えたときは所得税の申告が不要でも住民税の申告が別に必要になり得る点の3つは知っておく価値があります。制度の詳細や個別のケースの判断は、国税庁のタックスアンサーと所轄の税務署、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
本記事は2026年9月3日時点の国税庁タックスアンサー(令和7年4月1日現在法令等)および各行公式サイトの掲載内容に基づいています。税制は改正されることがあり、キャンペーンの内容・条件・期間も予告なく変更されます。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。